従前の地積は土地台帳の地積による旨の土地区画整理事業施行規程の規定に基づき、土地台帳の地積によつてした換地処分であつても、特に希望する者には実測地積により得る途が開かれているときは、憲法二九条に違反しない。
土地区画整理事業施行規程の規定に基づき土地台帳の地積によつてした換地処分と憲法二九条
特別都市計画法施行令11条,土地区画整理法53条2項,土地区画整理法66条1項,土地区画整理法67条,土地区画整理法施行令1条2項,憲法29条
判旨
土地区画整理事業において、原則として公簿地積により基準地積を定める方法は、緊急性や広範囲な施行等の事情があり、かつ希望者に実測の途が開かれている限り、憲法29条に違反しない。
問題の所在(論点)
土地区画整理事業において、実測地積ではなく公簿地積を基準として換地処分を行うことが、憲法29条(財産権)に違反するか、および土地区画整理法89条1項の照応の原則に反しないか。
規範
土地区画整理事業における基準地積の算定について、原則として公簿地積による方法は、①事業が緊急を要する場合や施行地区が広範囲である場合等において、実測による莫大な費用・労力や計画の著しい渋滞を避けるための「やむを得ない措置」といえ、②特に希望する者に限り実測地積による途が開かれているのであれば、憲法29条に違反しない。
重要事実
上告人は、土地区画整理事業の換地処分において、従前地の実測地積ではなく公簿地積を基準として基準地積が定められたことにより、財産権を侵害されたとして当該処分の違憲性等を争った。原審は、本件事業の規模や手続の合理性を踏まえ、公簿地積基準の採用を正当と判断したため、上告人が最高裁へ上告した。
事件番号: 昭和53(行ツ)169 / 裁判年月日: 昭和55年7月10日 / 結論: 棄却
土地区画整理組合が、原則として公簿地積を基準地積とし例外的に実測地積による方法で土地区画整理事業を施行する場合において、定款には地積決定の方法に関する原則的な基準のみを定め、例外的な措置については定款の委任により執行機関の制定する執行細則等における定めに委ねることも許される。
あてはめ
土地区画整理事業の合理的施行の観点から、全件実測は多大な費用と期間を要し、事業を停滞させる恐れがある。本件においても、事業の緊急性や規模に照らし、公簿地積を原則とする運用は合理的な制約の範囲内である。また、希望者に対して実測による是正の機会が提供されている状況下では、公募と実測の差異による不利益も最小化されており、正当な補償を欠く財産権侵害とはいえない。以上から、照応の原則にも反せず、適法な処分であると解される。
結論
本件換地処分は憲法29条に違反せず、また土地区画整理法89条1項の照応の原則にも違反しないため、上告は棄却される。
実務上の射程
土地区画整理事業における「基準地積」の決定手法の合理性を判断する際のリーディングケースである。答案では、行政の専門技術的裁量を前提としつつ、手続的保障(実測の申請機会)の有無を違憲・違法審査の決定的な要素として論じる際に活用すべきである。
事件番号: 昭和57(行ツ)97 / 裁判年月日: 昭和62年4月17日 / 結論: 破棄差戻
照応の原則違反を理由とする換地処分無効確認の訴えは、適法である。
事件番号: 昭和38(オ)1000 / 裁判年月日: 昭和40年3月2日 / 結論: 棄却
従前の土地の地積は土地台帳の地積による旨の土地区画整理施行規程の規定に基づき、土地台帳の地積によつてした換地予定地指定処分は、憲法第二九条に違反しない。
事件番号: 昭和34(オ)392 / 裁判年月日: 昭和36年12月12日 / 結論: 棄却
仮換地の指定にあたつてなさるべき従前の宅地との照応考慮は、原則として、土地区画整理事業開始の時における状況を基準としてなすべきである。