私人に権利を設定しまたは義務を免除する行政処分は、その成立に瑕疵があつても、処分庁において職権でこれを取り消し、変更し得るには、当該処分を取り消し、変更することの公益上の必要性が、処分関係人をしてその取消・変更による不利益を受忍させるに足るほど緊要なものであることを必要とする。
行政処分自庁取消の要件。
行政事件訴訟特別法1条
判旨
授益的行政処分の取消し・変更は、公益上の必要性が処分関係人の不利益を受忍させるに足りるほど緊要な場合に限り許容され、これに反する処分は違法となるが、その違法が当然無効と言えるためには瑕疵が重大かつ明白であることを要する。
問題の所在(論点)
授益的行政処分の職権取消し・変更が認められるための要件、および当該要件を欠く処分の効力(違法の程度)。
規範
私人に権利を設定し、または義務を免除する行政処分(授益的処分)は、その成立に瑕疵があっても、処分庁が職権でこれを取り消し、または変更できるのは、当該取消し・変更をすべき「公益上の必要性」が、処分関係人をして不利益を受忍させるに足りるほど「緊要」なものである場合に限られる。また、処分の違法性が当然無効となるためには、瑕疵が処分要件の認定の誤りに留まらず、客観的に明白であることを要する。
重要事実
上告人は特別都市計画法に基づき換地予定地の指定を受けたが、その後、被上告人(行政側)は変更指定処分を行った。変更の理由は、(イ)上告人と隣人Dとの減歩率の不均衡是正、(ロ)Dが自己への追加指定を要求し、応じなければ家屋移転を拒む態度を示したため道路拡張工事が滞ったこと、(ハ)当該土地が日当たりの悪い場所であったこと、の3点であった。上告人は、この変更指定処分が違法・無効であるとして争った。
事件番号: 昭和42(行ツ)99 / 裁判年月日: 昭和47年12月8日 / 結論: 棄却
旧特別都市計画法に基づき換地予定地が指定されたのちにおいても、区画整理事業の規模の大幅縮減に伴い、同土地を換地予定地から除外する必要を生じ、指定の相手方もいまだ現実に同土地の使用収益を行なつていないなど判示のような事情があるときは、区画整理事業施行者は、同土地につき換地予定地の指定を取り消す旨の変更指定処分をすることが…
あてはめ
本件変更理由は、(イ)減歩率の不均衡、(ロ)第三者の協力拒絶による工事停滞、(ハ)土地の利用価値の低さに過ぎない。これらは、既に指定を受けた者の法的地位を奪うほどの「緊要な公益上の必要性」とは認められないため、本件変更指定処分は違法である。しかし、この違法は処分要件の認定の誤りに帰するものであって、客観的に明白な瑕疵とはいえない。
結論
本件変更指定処分は違法ではあるが、当然無効ではない。したがって、無効を前提とする上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
授益的処分の職権取消しを制限する「信頼保護」の法理を、公益との比較衡量(受忍限度論)で定式化した重要判例である。答案上は、取消訴訟の出訴期間経過後に「無効確認」を求める際の「重大明白説」の適用場面、あるいは職権取消しの限界が問われる場面で活用する。
事件番号: 昭和34(オ)513 / 裁判年月日: 昭和35年5月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧土地区画整理法に基づき行われた換地予定地の指定処分は、新法施行後に手続規定の差異が生じたとしても、新法施行法に基づき新法上の仮換地指定としての効力を維持する。 第1 事案の概要:上告人は、旧土地区画整理法(旧法)に基づいてなされた本件換地予定地の指定処分について、無効を主張して争った。その理由は…
事件番号: 昭和57(行ツ)128 / 裁判年月日: 昭和60年12月17日 / 結論: 棄却
一 土地区画整理組合の設立認可は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。 二 土地区画整理組合の事業施行地区内の宅地の所有者は、右事業施行に伴う処分を受けるおそれのあるときは、同組合の設立認可処分の無効確認訴訟につき原告適格を有する。 三 甲が、乙を被告とする丙土地区画整理組合の設立認可処分の無効確認請求と同組合を被告…
事件番号: 昭和32(オ)328 / 裁判年月日: 昭和33年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地区画整理事業における換地予定地の指定処分について、従前の土地と比較して位置や利用価値等が著しく劣等でなく、かつ特定の者に不利益を強いるものでない限り、当該処分は適法である。 第1 事案の概要:上告人は、土地区画整理事業に伴う換地予定地の指定処分を受けたが、当該換地予定地が従前の土地と比較して位…