1 人の氏名,肖像等を無断で使用する行為は,(1)氏名,肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,(2)商品等の差別化を図る目的で氏名,肖像等を商品等に付し,(3)氏名,肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら氏名,肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に,当該顧客吸引力を排他的に利用する権利(いわゆるパブリシティ権)を侵害するものとして,不法行為法上違法となる。 2 歌手を被写体とする写真を同人に無断で週刊誌の記事に使用してこれを掲載する行為は,次の(1),(2)など判示の事実関係の下においては,専ら上記歌手の肖像の有する顧客吸引力の利用を目的とするものとはいえず,当該顧客吸引力を排他的に利用する権利(いわゆるパブリシティ権)を侵害するものとして不法行為法上違法であるということはできない。 (1) 上記記事の内容は,上記週刊誌発行の前年秋頃流行していた,上記歌手の曲の振り付けを利用したダイエット法を解説するとともに,子供の頃に上記歌手の曲の振り付けをまねていたタレントの思い出等を紹介するというものである。 (2) 上記写真は,約200頁の上記週刊誌全体の3頁の中で使用されたにすぎず,いずれも白黒写真であって,その大きさも,縦2.8cm,横3.6cmないし縦8cm,横10cm程度のものであった。 (1につき補足意見がある。)
1 人の氏名,肖像等を無断で使用する行為がいわゆるパブリシティ権を侵害するものとして不法行為法上違法となる場合 2 歌手を被写体とする写真を同人に無断で週刊誌に掲載する行為がいわゆるパブリシティ権を侵害するものではなく不法行為法上違法とはいえないとされた事例
(1,2につき)民法709条,憲法13条
判旨
パブリシティ権の侵害は、肖像等を専ら顧客吸引力の利用を目的として使用する場合に成立し、具体的には独立した鑑賞対象としての使用、商品差別化目的の使用、広告としての使用の3類型に該当する場合等に違法となる。本件では、記事内容を補足し読者の記憶を喚起する目的での使用に留まるため、不法行為は成立しない。
問題の所在(論点)
著名人の肖像を無断で使用する行為が、パブリシティ権を侵害し不法行為法(民法709条)上違法となる判断基準は何か。
規範
肖像等は人格権に由来し、その顧客吸引力を排他的に利用する権利(パブリシティ権)も人格権の一内容を構成する。もっとも、正当な表現行為等として受忍すべき場合もあるため、肖像等の無断使用が不法行為法上違法となるのは、①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、③肖像等を商品等の広告として使用するなど、「専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とする」といえる場合に限られる。
重要事実
元人気歌手「ピンク・レディー」の肖像写真14枚が、週刊誌のダイエット法解説記事に無断で掲載された。記事はタレントによる振り付け解説や思い出語りを内容とし、写真は白黒かつ小規模なもので、約200頁の雑誌中3頁に使用されたに過ぎなかった。本人らは顧客吸引力の排他的利用権の侵害を理由に損害賠償を請求した。
あてはめ
上告人らの肖像は顧客吸引力を有する。しかし、本件記事の主眼はダイエット法の解説やタレントの回想にあり、上告人ら自身を紹介するものではない。写真は記事内容を補足し、読者の記憶を喚起する目的で付随的に使用されたものと評価できる。写真のサイズや頁数に占める割合も限定的である。したがって、本件使用は「専ら顧客吸引力の利用を目的とする」ものとはいえない。
結論
被上告人の行為はパブリシティ権を侵害するものとはいえず、不法行為は成立しない。上告棄却。
実務上の射程
パブリシティ権侵害の基準を「専ら顧客吸引力の利用を目的とするか」という主観・客観を統合した基準に絞り込み、3つの具体的類型(独立鑑賞、差別化、広告)を提示した。報道や解説記事に付随する肖像利用については、この3類型に準ずる程度の利用目的がない限り、表現の自由への配慮から違法性が否定されやすいことを示している。
事件番号: 昭和58(オ)516 / 裁判年月日: 昭和61年5月30日 / 結論: 破棄差戻
一 一個の行為により同一著作物についての著作財産権と著作者人格権とが侵害されたことを理由とする著作財産権に基づく慰藉料請求と著作者人格権に基づく慰藉料請求とは、訴訟物を異にする別個の請求である。 二 旧著作権法(明治三二年法律第三九号)三六条ノ二所定の著作者の声望名誉とは、著作者がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価…