一 一個の行為により同一著作物についての著作財産権と著作者人格権とが侵害されたことを理由とする著作財産権に基づく慰藉料請求と著作者人格権に基づく慰藉料請求とは、訴訟物を異にする別個の請求である。 二 旧著作権法(明治三二年法律第三九号)三六条ノ二所定の著作者の声望名誉とは、著作者がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価を指し、名誉感情を含まない。
一 一個の行為により同一著作物についての著作財産権と著作者人格権とが侵害されたことを理由とする著作財産権に基づく慰藉料請求及び著作者人格権に基づく慰藉料請求と訴訟物の個数 二 旧著作権法(明治三二年法律第三九号)三六条ノ二所定の著作者の声望名誉の意義
旧著作権法(明治32年法律第39号)18条,旧著作権法(明治32年法律第39号)29条,旧著作権法(明治32年法律第39号)36条ノ2,民訴法186条,民訴法224条1項
判旨
著作権法上の名誉回復措置(115条等)の対象となる「名誉」は、客観的な社会的評価を指し、主観的な名誉感情は含まれない。また、著作財産権と著作者人格権の侵害による精神的損害は別個の訴訟物であり、慰謝料額はそれぞれ特定して請求すべきである。
問題の所在(論点)
1. 同一の侵害行為から生じる著作財産権侵害と著作者人格権侵害の慰謝料を合算して請求できるか。 2. 著作者人格権侵害に基づく謝罪広告等の名誉回復措置が認められるための「名誉」の意義、および侵害の要件はどうあるべきか。
規範
1. 著作財産権と著作者人格権は保護法益や譲渡性の有無を異にするため、同一の行為による侵害であっても、各侵害に基づく慰謝料請求は別個の訴訟物となる。したがって、各慰謝料額を特定して請求すべきである。 2. 著作権法が定める名誉回復措置の対象となる「名誉」とは、著作者の品性、名声、信用等について社会から受ける客観的な評価(社会的声望名誉)を指し、自己自身の人格的価値に対する主観的な評価(名誉感情)は含まれない。
重要事実
写真家である被上告人は、雪山を滑降するスキーヤーのカラー写真(本件写真)を撮影した。グラフィックデザイナーの上告人は、本件写真の一部をカットし、白黒化した上で自動車タイヤの写真を合成した「モンタージュ写真」を作成し、氏名を表示せずに雑誌等に掲載した。被上告人は、著作財産権及び著作者人格権の侵害を理由に、内訳を特定しない慰謝料50万円と謝罪広告を求めて提訴した。
あてはめ
1. 慰謝料について、原審は著作財産権侵害と著作者人格権侵害の慰謝料の内訳が特定されていない請求を認容したが、両者は別個の訴訟物である以上、釈明権を行使して各金額を確定させるべきであった。 2. 名誉回復措置について、上告人の行為は同一性保持権等の侵害には当たる。しかし、被上告人が高い評価を得ている写真家であることや本件の侵害態様を考慮しても、直ちに「社会的評価」が毀損された事実は認められず、主観的な名誉感情の侵害のみでは謝罪広告の請求は認められない。
結論
1. 慰謝料の内訳を特定させずに認容した原判決には審理不尽・理由不備の違法がある。 2. 社会的評価の毀損が認められない場合、著作者人格権侵害のみを理由に謝罪広告を命ずることはできない。
実務上の射程
パロディとしての改変であっても同一性保持権侵害を構成し得ることを前提としつつ、名誉回復措置(115条)の要件を厳格に解した。実務上、著作権侵害訴訟において慰謝料を請求する際は、財産権侵害分と人格権侵害分を明確に区別して主張・立証する必要がある。
事件番号: 平成21(受)2056 / 裁判年月日: 平成24年2月2日 / 結論: 棄却
1 人の氏名,肖像等を無断で使用する行為は,(1)氏名,肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,(2)商品等の差別化を図る目的で氏名,肖像等を商品等に付し,(3)氏名,肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら氏名,肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に,当該顧客吸引力を排他的に…