一 旧著作権法(明治三二年法律第三九号)三〇条一項二号にいう引用とは、紹介、参照、論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録することをいい、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、右両著作物間に前者が主、後者が従の関係があることを要する。 二 他人が著作した写真を改変して利用することによりモンタージュ写真を作成して発行した場合において、右モンタージュ写真から他人の写真における本質的な特徴自体を直接感得することができるときは、右モンタージュ写真を一個の著作物とみることができるとしても、その作成発行は、右他人の同意がない限り、その著作者人格権を侵害するものである。 三 雪の斜面をスノータイヤの痕跡のようなシュプールを描いて滑降して来た六名のスキーヤーを撮影して著作した判示のようなカラーの山岳風景写真の一部を省き、右シュプールをタイヤの痕跡に見立ててその起点にあたる雪の斜面上縁に巨大なスノータイヤの写真を合成して作成した判示のような白黒のモンタージユ写真を発行することは、右山岳風景写真の著作者の同意がない限り、その著作者人格権を侵害するものである。 (二につき補足意見がある。)
一 旧著作権法(明治三二年法律第三九号)三〇条一項二号にいう引用の意義 二 他人が著作した写真を改変して利用することによりモンタージュ写真を作成して発行した場合と著作者人格権の侵害 三 モンタージユ写真の作成発行が著作者人格権の侵害にあたるとされた事例
旧著作権法(明治32年法律第39号)18条,旧著作権法(明治32年法律第39号)30条1項2号,旧著作権法(明治32年法律第39号)36条ノ2
判旨
著作権法上の「引用」に該当するためには、引用側と被引用側の著作物が明瞭に区別され、かつ両者の間に主従関係が必要である。また、他人の著作物を素材として利用し、別個の思想・感情を表現する創作性を認めたとしても、原著作物の表現上の本質的特徴を直接感得できる態様で改変利用する行為は、同一性保持権の侵害を構成する。
問題の所在(論点)
1. 既存の写真を素材として合成写真を作成する行為が、旧著作権法30条1項2号の「引用」に該当するか。 2. パロディとしての創作性が認められる場合、原著作者の「同一性保持権」を侵害しないといえるか。
規範
1. 旧著作権法30条1項2号(現32条1項)にいう「引用」とは、紹介・参照・論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録することをいい、①引用する側の著作物と引用される側の著作物とを明瞭に区別して認識できること(区分性)、②両著作物の間に前者が主、後者が従の関係にあること(主従関係)を要する。 2. 著作者人格権の一内容たる同一性保持権との関係では、他人の著作物を許諾なく素材として利用できるのは、原著作物の表現形式上の本質的な特徴をそれ自体として直接感得させないような態様で利用する場合に限られる。
重要事実
上告人(写真家)が撮影した、雪山と6名のスキーヤーを俯瞰する構図のカラー写真(本件写真)について、被上告人がその一部(スキーヤー等の主要部分)を切除し、白黒写真に複製した上で、別のタイヤ写真を合成したモンタージュ写真を作成し、自作の写真集等に掲載した。被上告人は、これがパロディとしての創作性を有し、正当な引用の範囲内であると主張して争った。
あてはめ
1. 本件モンタージュ写真は、本件写真の一部を一体的に取り込み利用しており、表現形式上、本件写真部分が「従」であるとは認められないため、法30条1項2号の引用には当たらない。 2. 本件モンタージュ写真は、タイヤを合成し白黒化する等の改変が加えられているが、一瞥して本件写真の本質的な特徴(シュプールを描くスキーヤーと山岳風景)を直接感得できる。したがって、たとえ合成写真として別個の思想・感情を表現する創作性が認められるとしても、本件写真の同一性を害する改変であり、同一性保持権の侵害を構成する。
結論
被上告人による本件モンタージュ写真の作成・発行は、引用の要件を満たさず、また上告人の同一性保持権を侵害するものであり、著作者人格権侵害が成立する。
実務上の射程
著作権法32条1項の「引用」の解釈における「明瞭区分性」「主従関係」の二要件を導いたリーディングケースである。パロディ目的であっても、原著作物の本質的特徴を直接感得させる改変は同一性保持権(20条1項)侵害となる点に注意が必要である。なお、現在の実務における「主従関係」は、質的・量的な分量比較だけでなく、利用目的の妥当性等を含めた総合考慮で判断される傾向にあるが、答案上は本判決の二要件をまず示すべきである。
事件番号: 平成21(受)2056 / 裁判年月日: 平成24年2月2日 / 結論: 棄却
1 人の氏名,肖像等を無断で使用する行為は,(1)氏名,肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,(2)商品等の差別化を図る目的で氏名,肖像等を商品等に付し,(3)氏名,肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら氏名,肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に,当該顧客吸引力を排他的に…