1 パラメータにより主人公の人物像が表現され,その変化に応じてストーリーが展開されるゲームソフトについて,パラメータを本来ならばあり得ない高数値に置き換えるメモリーカードの使用によって,主人公の人物像が改変され,その結果,上記ゲームソフトのストーリーが本来予定された範囲を超えて展開されるなど判示の事実関係の下においては,当該メモリーカードの使用は,上記ゲームソフトを改変し,その著作者の有する同一性保持権を侵害する。 2 専らゲームソフトの改変のみを目的とするメモリーカードを輸入,販売し,他人の使用を意図して流通に置いた者は,他人の使用により,ゲームソフトの同一性保持権の侵害をじゃっ起したものとして,ゲームソフトの著作者に対し,不法行為に基づく損害賠償責任を負う。
1 メモリーカードの使用がゲームソフトの著作者の有する同一性保持権を侵害するとされた事例 2 専らゲームソフトの改変のみを目的とするメモリーカードを輸入,販売し,他人の使用を意図して流通に置いた者の不法行為責任
著作権法20条,著作権法第7章権利侵害,民法709条,民法719条
判旨
ゲームソフトのパラメータを改変し、本来予定された範囲を超えてストーリーを展開させるメモリーカードの使用は同一性保持権の侵害に当たる。また、専ら改変を目的とする機器を輸入・販売し他人の使用を惹起した者は、不法行為責任を負う。
問題の所在(論点)
1. ゲームソフトのプログラム自体を書き換えるのではなく、外部記憶媒体(メモリーカード)を用いて実行時のパラメータを変更する行為が、同一性保持権の侵害(20条1項)に当たるか。 2. メモリーカードの販売者が、直接の改変主体でないにもかかわらず不法行為責任を負うか。
規範
1. 著作物の同一性保持権(著作権法20条1項)の侵害とは、著作物の内容・形式・題号をその意に反して改変することをいう。ゲームソフトにおいて、パラメータの変更により表現される人物像が書き換えられ、ストーリーが本来予定された範囲を超えて展開される場合は、著作物の改変に該当する。 2. 直接の改変主体でない者であっても、専ら当該著作物の改変のみを目的とする機器を輸入・販売し、他人の使用を意図して流通に置いた者は、他人の使用による侵害を惹起したものとして、不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)を負う。
重要事実
ゲームソフト「ときめきメモリアル」の著作者である被上告人が、パラメータを書き換えるメモリーカードを販売した上告人に対し、同一性保持権侵害を理由とする損害賠償を請求した。当該ソフトは、プレイヤーの能力値(パラメータ)の達成度に応じてストーリーが展開する恋愛シミュレーションゲームである。上告人の販売したメモリーカードを使用すると、開始直後から通常ではあり得ない高数値に設定され、本来登場し得ないキャラが登場したり、必ず愛の告白を受けたりする状態になった。
あてはめ
1. 本件ゲームのパラメータは、主人公の人物像を表現し、その変化に応じてストーリーを左右する重要な要素である。メモリーカードの使用は、設定された人物像を改変し、本来の制限を超えた展開をもたらすため、ストーリーそのものの改変を招くといえる。したがって、同一性保持権の侵害に当たる。 2. 上告人は、専ら本件ゲームの改変のみを目的とする本件メモリーカードを輸入・販売した。これは他人の使用を予期して流通させたものであり、実際に購入者が使用して侵害が生じた以上、上告人は侵害を惹起した者として賠償責任を免れない。
結論
本件メモリーカードの使用は同一性保持権を侵害し、これを販売した上告人は不法行為に基づく損害賠償責任を負う。
実務上の射程
ゲームソフトが「映画の著作物」に該当するか否かに関わらず、同一性保持権侵害を認めた。また、直接の侵害主体(ユーザー)ではなく、侵害を容易にする道具を販売した「道具提供者」の責任を認めた点で、実務上の意義が大きい。答案では、プログラムの改変を伴わない数値操作であっても、表現内容(ストーリー等)の実質的な改変を招く場合には侵害になり得ると論じる際に活用すべきである。
事件番号: 平成11(受)922 / 裁判年月日: 平成13年6月28日 / 結論: 破棄自判
1 言語の著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。 2 思想,感情若しく…