意匠登録を受ける権利を有しない者の出願により意匠登録がされた場合には、意匠法四条一項の新規性喪失の例外規定の適用があるときを除き、意匠登録を受ける権利を有する者であっても、当該意匠について意匠登録を受けることはできない。
意匠登録を受ける権利を有しない者による意匠登録がされた場合と右権利を有する者の当該意匠についての意匠登録の可否
意匠法3条1項,意匠法4条1項,意匠法9条,意匠法15条2項,特許法33条
判旨
冒認出願により意匠権の設定登録がなされた場合、真の権利者は意匠公報掲載による公知化を理由に、原則として自ら意匠登録を受けることができなくなるため、損害が発生し得る。
問題の所在(論点)
無権利者による意匠登録出願および設定登録(冒認登録)がなされた場合、真の権利者は意匠登録を受ける権利を実質的に喪失し、不法行為上の損害を被ったといえるか。意匠法3条1項(新規性)との関係が問題となる。
規範
意匠の創作者または意匠登録を受ける権利を承継していない者が意匠登録出願を行い、設定登録がなされた場合、当該意匠は公報掲載により公知となる。そのため、真の創作者等が後に出願しても、意匠法3条1項の新規性要件を充足せず、同法4条1項の新規性喪失の例外規定が適用される場合を除き、意匠登録を受けることはできない。
重要事実
上告人(意匠の創作者)が有していた意匠登録を受ける権利につき、承継人ではない被上告人が無断で出願し、意匠権の設定登録を受けた。原審は、この冒認登録によっても上告人の権利自体は喪失せず出願も妨げられないとしたが、上告人は権利の価値相当の損害を被ったとして不法行為に基づく損害賠償を請求した。なお、消滅時効の成否も争点となった。
事件番号: 昭和41(オ)1360 / 裁判年月日: 昭和44年10月17日 / 結論: 棄却
一、旧意匠法(大正一〇年法律第九八号)九条にいう「其ノ意匠実施ノ事業ヲ為シ」とは、当該登録意匠につき同条による実施権を主張する者が、自己のため、自己の計算において、その意匠実施の事業をすることを意味し、かつ、それは、その者が、自己の有する事業設備を使用し、みずから直接に右意匠にかかる物品の製造、販売等をする場合だけでは…
あてはめ
被上告人が無権利者でありながら本件意匠の設定登録を受けた結果、当該意匠は意匠公報に掲載され公知の事実となった。これにより、真の権利者である上告人が後に出願しても、新規性(意匠法3条1項)を欠くものとして拒絶される状態に至っている。したがって、真の権利者が登録を受けることが不可能になったという点において、権利の価値相当の損害が発生したと評価される。
結論
冒認登録によって公報掲載がなされた以上、新規性喪失の例外規定に該当しない限り真の権利者の出願は認められず、損害が発生したといえる(ただし、本件では不法行為による損害賠償請求権が時効消滅しているため、上告は棄却された)。
実務上の射程
冒認出願により真の権利者の「登録を受ける地位」が侵害されることを明示した判例である。損害論において、単なる権利行使の妨害にとどまらず、公知化による新規性喪失という法的不能が生じる点を論述する際に用いる。時効の起算点や損害額の算定が実務上の焦点となる。
事件番号: 平成6(オ)535 / 裁判年月日: 平成7年2月24日 / 結論: 破棄自判
第一審及び控訴審の訴訟追行並びに上告の堤起が授権を欠く訴訟代理人により行われた場合において、本人が右各訴訟行為のうち上告の提起のみを追認して訴訟代理権の欠缺を理由に控訴審判決の破棄を求めているときは、上告審は、控訴審判決を破棄して第一審判決を取り消した上、訴えを却下すべきである。