一、旧意匠法(大正一〇年法律第九八号)九条にいう「其ノ意匠実施ノ事業ヲ為シ」とは、当該登録意匠につき同条による実施権を主張する者が、自己のため、自己の計算において、その意匠実施の事業をすることを意味し、かつ、それは、その者が、自己の有する事業設備を使用し、みずから直接に右意匠にかかる物品の製造、販売等をする場合だけではなく、その者が、事業設備を有する他人に注文して、自己のためにのみ右意匠にかかる物品を製造させ、その引渡を受けて、これを他に販売する場合をも含む。 二、第三者が、当該登録意匠につき旧意匠法(大正一〇年法律第九八号)九条による実施権を有する者からの注文に基づき、もつぱらその者のためにのみ右意匠にかかる物品の製造、販売等をしているにすぎないときは、その第三者のする右物品の製造、販売等の行為は、右実施権を有する者の権利行使の範囲内に属する。
一、旧意匠法(大正一〇年法律第九八号)九条にいう「其ノ意匠実施ノ事業ヲ為シ」の意義 二、旧意匠法(大正一〇年法律第九八号)九条による実施権の行使の範囲
旧意匠法(大正10年法律第98号)9条
判旨
旧意匠法9条(現意匠法29条)の先使用権について、自己の事業設備を使用せず他人に注文して製造・販売する場合も「意匠実施の事業を為し」に該当し、その注文を受けた製造者は注文者の機関的関係において実施権を行使したと解される。
問題の所在(論点)
旧意匠法9条(現29条)にいう「意匠実施の事業を為し」の意義、および注文を受けて製造を行う下請業者が注文者の先使用権を援用できるか。また、事業の基礎となる契約の解除が先使用権に影響するか。
規範
1. 先使用権の発生要件である「意匠実施の事業を為し」とは、自己のため、自己の計算において事業を行うことを意味するが、自ら直接製造・販売する場合に限らず、他人に注文して自己のためにのみ製造させ、その引渡を受けて他に販売する場合も含む。 2. 注文を受けて製造・販売等を行う者は、注文者の機関的な関係において、注文者の有する先使用権を行使したものと認められる。 3. 先使用権は要件を具備した事実に基づき当然に発生するものであり、事業の前提となる契約が解除され事業が一時中止されたとしても、直ちに事業の廃止や権利の消滅を意味しない。
重要事実
訴外D社は、上告人Eが地球儀型ラジオの意匠登録出願をする以前に、上告人らが代表する会社との間で当該意匠に関する「すべての権利」を対象とする契約を締結し、これに基づき被上告人らに対し当該製品の製造・輸出を注文していた。その後、上告人Eによる意匠登録がなされ、上告人らは被上告人らによる製造・販売等が意匠権を侵害すると主張した。なお、D社と上告人らとの間の契約は後に解除されていた。
あてはめ
D社は自ら製造設備を持たず被上告人らに注文していたが、自己の計算において事業を行っていたといえるため「事業を為す者」に当たる。被上告人らは、専らD社の注文に基づきそのためにのみ製造・販売等を行っていたものであり、D社の機関的な関係においてその先使用権を行使したと評価できる。また、D社が「善意」であった事実は原審により認定されており、契約解除による事業の一時中止は、客観的にみて事業の廃止とまで評価できないため、先使用権は消滅していない。
結論
被上告人らによる製造・販売行為は、D社が有する先使用権の行使の範囲内に属し、意匠権侵害とはならない。
実務上の射程
意匠法・特許法における先使用権の「実施」の主体性に関する重要判例。いわゆる委託製造(OEM)において、注文者が先使用権を有する場合に、受託製造者がその「手足」として保護される法理(機関説・手足論)の根拠となる。
事件番号: 昭和42(オ)804 / 裁判年月日: 昭和42年12月22日 / 結論: 棄却
原審の確定した本件実用新案の目的、作用効果および椅子の構造上被布をもつて緩衝体を被蓋してこれを固着する必要ある部分の範囲とを合せ考えれば、本件実用新案公報記載の「座席枠体」に椅子の背当部分も含まれるものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和28(オ)500 / 裁判年月日: 昭和30年9月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧商標法9条1項前段(現行法に相当する規定を含む)の規定に基づき標章を継続使用する場合には、商標権者の同意や通知を要しない。 第1 事案の概要:上告人は、商標権の共有持分の譲渡等に関連し、標章の継続使用(旧商標法9条1項前段)にあたって同意や通知が必要であると主張して争ったが、原審はこれを否定した…