原審の確定した本件実用新案の目的、作用効果および椅子の構造上被布をもつて緩衝体を被蓋してこれを固着する必要ある部分の範囲とを合せ考えれば、本件実用新案公報記載の「座席枠体」に椅子の背当部分も含まれるものと解するのが相当である。
「椅子用座席」の表張りに関する実用新案権の権利範囲に関する認定事例
実用新案法26条,特許法70条
判旨
実用新案の登録請求の範囲に記載された用語の解釈において、考案の目的、作用効果、および構造上の必要性を総合的に考慮し、「座席枠体」に背当部分が含まれると判断することは正当である。
問題の所在(論点)
実用新案の登録請求の範囲(技術的範囲)の解釈において、公報上の用語(本件では「座席枠体」)の意義を、考案の目的や構造上の必要性から広義に解釈することの是非が問題となった。
規範
登録請求の範囲に記載された用語の意義は、文言のみにとらわれるのではなく、実用新案公報に記載された考案の目的、作用効果、および当該製品の構造上、その機能を果たすために必要な範囲を総合的に考慮して解釈すべきである。
重要事実
上告人は、実用新案権の侵害に関する訴訟において、本件実用新案公報に記載された「座席枠体」という用語の解釈を争った。原審は、当該実用新案の目的や作用効果に加え、椅子の構造上、被布をもって緩衝体を被蓋して固着する必要がある範囲を検討し、「座席枠体」には椅子の背当部分も含まれると判断した。上告人は、この解釈に違法があるとして上告した。
事件番号: 昭和39(オ)1469 / 裁判年月日: 昭和41年11月18日 / 結論: 棄却
実用新案法第二六条は特許法第七〇条を準用しているから、実用新案の技術的範囲、したがつてまたその権利の範囲は、登録請求の願書添付の明細書にある登録請求の範囲の記載に基づいて定められなければならないが、右範囲の記載の意味内容をより具体的に正確に判断する資料として、右明細書の他の部分に記載されている考案の作用効果を考慮するこ…
あてはめ
本件実用新案の目的および作用効果に照らせば、単に座る部分のみならず、椅子の構造として緩衝体を固定する必要がある箇所全体を捉えるのが合理的である。椅子の背当部分も、被布により緩衝体を被蓋して固着すべき構造上の必要性がある範囲に含まれるため、これを「座席枠体」に包含されると解釈することは、考案の趣旨に合致する。したがって、原審が実質的な機能や目的から用語を解釈した手法は妥当である。
結論
本件実用新案の「座席枠体」に椅子の背当部分も含まれるとした原審の判断は正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
知財分野の答案において、クレーム解釈の際に文言の形式的意義のみならず、明細書(公報)全体の記載から技術的意義を確定する手法の論拠として利用できる。特に、用語が複数の意味を持ち得る場合に、目的・作用効果からその範囲を画定する際の判断枠組みとして有用である。
事件番号: 昭和49(オ)175 / 裁判年月日: 昭和50年10月9日 / 結論: 破棄差戻
判文参照
事件番号: 昭和50(オ)54 / 裁判年月日: 昭和50年5月27日 / 結論: 棄却
実用新案の明細書により当該実用新案の技術的範囲を確定するにあたつては、明細書中の「登録請求の範囲」の項記載の意味内容を具体的、正確に判断する資料として、右明細書の他の部分に記載された考案の構造及び作用効果を考慮することができる。
事件番号: 昭和41(オ)1360 / 裁判年月日: 昭和44年10月17日 / 結論: 棄却
一、旧意匠法(大正一〇年法律第九八号)九条にいう「其ノ意匠実施ノ事業ヲ為シ」とは、当該登録意匠につき同条による実施権を主張する者が、自己のため、自己の計算において、その意匠実施の事業をすることを意味し、かつ、それは、その者が、自己の有する事業設備を使用し、みずから直接に右意匠にかかる物品の製造、販売等をする場合だけでは…
事件番号: 昭和40(行ツ)65 / 裁判年月日: 昭和43年4月12日 / 結論: 棄却
実用新案における構造の類否の判断にあたつて必然的にその構造を結果した目的および作用効果をも考慮することを許されないものではない。