実用新案法第二六条は特許法第七〇条を準用しているから、実用新案の技術的範囲、したがつてまたその権利の範囲は、登録請求の願書添付の明細書にある登録請求の範囲の記載に基づいて定められなければならないが、右範囲の記載の意味内容をより具体的に正確に判断する資料として、右明細書の他の部分に記載されている考案の作用効果を考慮することはなんら差し支えない。
実用新案法第二六条の法意
実用新案法26条,特許法70条
判旨
実用新案権の技術的範囲は登録請求の範囲の記載に基づいて定められるが、その意味内容を具体的に正確に判断する資料として、明細書の他の部分に記載された考案の作用効果を考慮することができる。
問題の所在(論点)
実用新案法26条(特許法70条の準用)に基づき技術的範囲を画定する際、登録請求の範囲の記載を超えて、明細書記載の「考案の作用効果」を参酌することは認められるか。
規範
実用新案権の技術的範囲(権利の範囲)は、実用新案法26条が準用する特許法70条に基づき、願書添付の明細書の登録請求の範囲の記載に基づいて定められる。ただし、登録請求の範囲の記載の意味内容をより具体的に正確に判断するための資料として、当該明細書の他の部分に記載されている「考案の作用効果」を考慮することは許容される。
重要事実
上告人は「温床用覆布の構造」に関する登録実用新案(本件考案)の権利者である。本件考案の要部は、特定の横幅を持つ皮膜体と網目体を連着し、網目体が覆布の端部にある点に特徴があった。上告人は、被上告人が製造販売する温床用覆布が本件考案の権利範囲に属すると主張して侵害を訴えたが、原審は構成および作用効果が異なると判断し、侵害を否定した。これに対し上告人が、権利範囲の判断において登録請求の範囲にない事項(作用効果)を考慮したのは違法であるとして上告した。
事件番号: 昭和50(オ)54 / 裁判年月日: 昭和50年5月27日 / 結論: 棄却
実用新案の明細書により当該実用新案の技術的範囲を確定するにあたつては、明細書中の「登録請求の範囲」の項記載の意味内容を具体的、正確に判断する資料として、右明細書の他の部分に記載された考案の構造及び作用効果を考慮することができる。
あてはめ
実用新案権の範囲は文言に基づいて客観的に画定されるべきであるが、文言のみでは技術的意義が不明瞭な場合がある。本件においても、登録請求の範囲の記載内容を「具体的に正確に判断」するために、明細書中の他の記載、特に考案から生じる特有の作用効果を補助資料として参酌することは、文言の趣旨を明らかにする上で合理的な解釈手法といえる。原審は、この資料に基づき本件考案の技術的意義を確定した上で、被疑侵害者(本件温床用覆布)がその構成および作用効果を異にすると判断しており、これは登録請求の範囲を逸脱して範囲を定めたものとはいえない。
結論
登録請求の範囲の記載の意味内容を解釈する際、明細書の他の部分の作用効果を考慮することは適法である。したがって、本件考案と構成・作用効果を異にする対象製品は技術的範囲に属さず、実用新案権侵害は成立しない。
実務上の射程
特許法70条2項(及び実用新案法26条)が明文化される以前の判決であるが、文言主義を原則としつつ、明細書及び図面の記載(作用効果を含む)を参酌して技術的範囲を解釈するという現在の実務慣行を基礎づけるものである。答案上は、文言解釈において「作用効果」を考慮できる根拠として引用可能である。
事件番号: 昭和47(オ)659 / 裁判年月日: 昭和49年6月28日 / 結論: 棄却
特許権の侵害を事由とする損害賠償を求める訴においても、特許発明の技術的範囲を確定するについては、出願当時の技術水準を考慮すべきである。
事件番号: 昭和40(行ツ)65 / 裁判年月日: 昭和43年4月12日 / 結論: 棄却
実用新案における構造の類否の判断にあたつて必然的にその構造を結果した目的および作用効果をも考慮することを許されないものではない。
事件番号: 昭和42(オ)804 / 裁判年月日: 昭和42年12月22日 / 結論: 棄却
原審の確定した本件実用新案の目的、作用効果および椅子の構造上被布をもつて緩衝体を被蓋してこれを固着する必要ある部分の範囲とを合せ考えれば、本件実用新案公報記載の「座席枠体」に椅子の背当部分も含まれるものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和40(行ツ)4 / 裁判年月日: 昭和43年6月20日 / 結論: 棄却
旧実用新案法(大正一〇年法律第九七号)に基づく実用新案の類否の判定にあたつては、たんに外形的な型の異同のみではなく、その構造を結果した目的、作用効果をも考慮すべきである。