特許権の侵害を事由とする損害賠償を求める訴においても、特許発明の技術的範囲を確定するについては、出願当時の技術水準を考慮すべきである。
特許権の侵害を事由とする損害賠償請求訴訟において特許出願当時の技術水準を考慮することの当否
特許法29条,特許法70条
判旨
特許発明の技術的範囲を確定するに際しては、出願当時公知であった部分は新規な発明とはいえないため、当該公知部分を技術的範囲から除外して解釈すべきである。
問題の所在(論点)
特許発明の技術的範囲を確定する際、出願時に公知であった技術的事項をどのように扱うべきか。また、公知部分を除外して技術的範囲を画定することが許されるか(特許法70条1項に関連する技術的範囲の解釈手法)。
規範
特許権は新規な工業的発明に対して付与されるものである。したがって、特定の特許発明の技術的範囲を確定するにあたっては、出願当時において公知であった部分は新規な発明とはいえないため、当該公知部分を除外して新規な技術的思想の趣旨を明らかにすべきである。
重要事実
上告人(特許権者)は、被上告人の製品が自らの特許権の技術的範囲に属すると主張して侵害訴訟を提起した。原審は、当該特許発明のうち特定の技術的思想が本件特許出願以前から既に公知であったと認定した上で、被上告人製品と本件特許発明との間には構造および作用効果に差異があるとして、侵害を否定した。これに対し、上告人が事実誤認や法の適用誤りを理由に上告した事案である。
事件番号: 昭和39(オ)1469 / 裁判年月日: 昭和41年11月18日 / 結論: 棄却
実用新案法第二六条は特許法第七〇条を準用しているから、実用新案の技術的範囲、したがつてまたその権利の範囲は、登録請求の願書添付の明細書にある登録請求の範囲の記載に基づいて定められなければならないが、右範囲の記載の意味内容をより具体的に正確に判断する資料として、右明細書の他の部分に記載されている考案の作用効果を考慮するこ…
あてはめ
特許制度の趣旨は新規な発明の保護にある。本件において、原審が認定した技術的思想は本件特許出願前から既に公知であった。この公知部分は「新規な発明」には該当しないため、技術的範囲を画定する際の基礎から除外されるべきである。この前提に立って被上告人製品と比較すると、両者の間には構造および作用効果において明確な差異が認められる。したがって、評価上、被上告人製品は本件特許発明の技術的範囲に属するものとは認められない。
結論
特許発明の技術的範囲を確定する際、出願時の公知部分を除外して解釈することは正当である。本件製品は当該範囲に属さないため、特許権侵害は成立しない。
実務上の射程
本判決は、いわゆる「公知技術除外例」の法理を明示したものである。実務上、文言上は特許発明の範囲に含まれるように見えても、その一部が公知技術である場合には、その部分を技術的範囲から除外することで実質的に権利範囲を狭く解釈する抗弁として機能する。答案上は、特許法70条に基づく技術的範囲の画定において、出願時公知技術の存否を確認し、範囲を限定的に解釈する際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和33(オ)535 / 裁判年月日: 昭和38年6月25日 / 結論: 棄却
特許出願にあたつて提出される特許発明明細書の記載中に公知公用の部分が含まれていることを確定するのは証拠の解釈につき事実審裁判所の職権行使にほかならない。
事件番号: 昭和40(行ツ)31 / 裁判年月日: 昭和44年7月8日
【結論(判旨の要点)】特許出願にかかる発明が、引用例等の公知技術から当業者が容易に想到し得べきものである場合、進歩性が否定され、特許を受けることができない。 第1 事案の概要:本件発明は、引用例である「メリアンド・テキスタイルベリヒテ」誌に掲載された公知技術に基づき、進歩性の有無が争点となった。特許庁の審決では、本件発…