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特許発明の要旨認定にあたり公知事実を除外しえないとした判断が違法でないとされた事例
旧特許法(大正10年法律第96号)84条1項2号
判旨
特許発明の要旨認定において、公知の事実であっても、それが発明を構成する他の技術要素と不可分に結合し、一個の技術思想として有機的に統一されている場合には、これを除外して認定することはできない。
問題の所在(論点)
特許発明の要旨を認定するにあたり、発明の構成要素の一部に公知の事実が含まれている場合、当該公知部分を除外して(または分離して)要旨を認定すべきか、あるいは公知部分を含めた全体として認定すべきか。
規範
特許発明の要旨認定に際して、発明を構成する一部の技術要素が公知の事実であっても、その要素が他の構成要素と不可分的に結合し、一個の技術思想として組織されている場合には、当該公知部分を分離分断して認定することは許されない。技術思想の有機的統一性を重視すべきである。
重要事実
本件特許発明は、含水植物繊維質微砕物に金網を当てて成型する技術に、模様付けのための型板の組入れを結合させた硬質繊維板の製造方法である。金網を使用して成型すること自体は公知の事実であったが、この技術を欠いては、含水植物繊維微砕物から一挙に成型すると同時に模様を付与するという本件発明の目的が達成できない関係にあった。
あてはめ
本件発明においては、公知の金網成型技術と模様付け型板の組入れが「不可分的に結合」している。これらは含水植物繊維微砕物から一挙に成型し同時に模様を付与するという「一個の技術思想」に組織されている。公知事実を除外することは、有機的に統一された技術を「分離分断」することになり、模様付け硬質繊維板の製造という目的達成を不可能にする。したがって、公知事実であっても発明の要旨を構成する不可欠な要素として認定されるべきである。
結論
本件特許発明の要旨認定において、金網を使用して成型する公知の事実を除外せず、一体のものとして認定した原審の判断は正当である。
実務上の射程
特許無効審判や侵害訴訟における特許発明の技術的範囲の確定(要旨認定)において、公知技術を切り捨てて「新規な部分」のみを抽出して認定する手法を否定した。発明を「技術思想の結合体」として捉えるべき局面で引用できる。ただし、あくまで「不可分的な結合」が認められる場合に限定される点に注意を要する。
事件番号: 昭和40(行ツ)65 / 裁判年月日: 昭和43年4月12日 / 結論: 棄却
実用新案における構造の類否の判断にあたつて必然的にその構造を結果した目的および作用効果をも考慮することを許されないものではない。
事件番号: 昭和40(行ツ)4 / 裁判年月日: 昭和43年6月20日 / 結論: 棄却
旧実用新案法(大正一〇年法律第九七号)に基づく実用新案の類否の判定にあたつては、たんに外形的な型の異同のみではなく、その構造を結果した目的、作用効果をも考慮すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)478 / 裁判年月日: 昭和35年9月13日 / 結論: 棄却
商標が類似する理由の説明については、裁判所は当事者の主張にとらわれない。