実用新案における構造の類否の判断にあたつて必然的にその構造を結果した目的および作用効果をも考慮することを許されないものではない。
実用新案における構造の類否判定の基準
旧実用新案法(大正10年法律第97号)1条
判旨
実用新案の権利範囲を画定する構造の類否判断において、その構造がもたらす目的や作用効果を考慮することは許容され、構造・作用効果の双方が異なる場合は均等関係も否定される。
問題の所在(論点)
実用新案権の侵害訴訟において、登録考案と対象物件の構造の類否を判断する際、その構造が奏する「作用効果」の相違を考慮に入れて判断することは許されるか。また、構造および作用効果に相違がある場合に均等論を適用できるか。
規範
実用新案の技術的範囲(権利範囲)を画定する際の構造の類否判断にあたっては、その構造を結果した目的および作用効果を考慮して判断すべきである。また、対象物件が考案の必須要件を欠き、かつ作用効果においても相違が認められる場合には、均等の技術思想に基づくものとは認められず、権利範囲に属しない。
重要事実
本件実用新案は、挟着板をタイヤホイール内部に挿入して吊り上げる予備タイヤ保持装置である。出願当時、同様の基本構造は公知であったため、本件考案の「挟着板の特殊な構造」が登録の必須要件(要部)とされた。これに対し、被告の(イ)号物件は、挟着板の構造において本件考案と相違しており、原審は構造および作用効果の相違を理由に非類似と判断した。上告人は、実用新案の類否は構造のみで判断すべきであり、作用効果の相違を考慮して非類似とした原判決には誤りがあると主張した。
事件番号: 昭和40(行ツ)4 / 裁判年月日: 昭和43年6月20日 / 結論: 棄却
旧実用新案法(大正一〇年法律第九七号)に基づく実用新案の類否の判定にあたつては、たんに外形的な型の異同のみではなく、その構造を結果した目的、作用効果をも考慮すべきである。
あてはめ
本件実用新案において、挟着板の特殊構造は必須要件を構成する。対象物件(イ)は、この挟着板の構造において本件考案と明確に異なり、それに伴い作用効果においても相違が生じている。実用新案における構造の類否判断では、その構造を採用した目的や得られる作用効果をあわせて考慮することが正当であり、本件のように構造と作用効果の両面で相違が認められる以上、均等の技術思想に由来するものとはいえない。したがって、(イ)号物件は本件考案の必須要件を欠くものと解される。
結論
実用新案の構造の類否判断において作用効果を考慮することは正当であり、構造・作用効果の双方が異なる(イ)号物件は、本件実用新案の権利範囲に属しない。
実務上の射程
文言侵害の成否(構成要件充足性)の判断において、物理的な構造の比較のみならず、その構造が果たす役割(作用効果)を参酌して実質的に判断する手法を示す。均等論の適否を検討する際にも、作用効果の同一性が不可欠であることを示唆しており、答案上は権利範囲の外延を確定する際の判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)226 / 裁判年月日: 昭和37年7月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実用新案権の抵触や権利範囲の判断は、特許権と異なり、考案の効果の差異ではなく物品の形状・構造・組合せといった外形的考案の同一性によって判定すべきである。 第1 事案の概要:上告人は実用新案権を有しており、相手方の実施製品((イ)号)が自らの実用新案権を侵害する(抵触する)と主張して争った。原審は、…
事件番号: 昭和39(行ツ)62 / 裁判年月日: 昭和43年4月4日 / 結論: 破棄差戻
特許庁が、実用新案登録無効審判において提出された公知刊行物の記載によつては旧実用新案法(大正一〇年法律第九七号)第一条の考案を構成しないものとすることはできないと判断して、請求が成り立たない旨の審決をした場合であつても、右審決の取消訴訟において、当事者は、審決の判断を受けていない新たな公知刊行物に基づいて当該実用新案を…