実用新案の説明書により当該実用新案の権利範囲を確定するにあたつては、説明書中の「登録請求ノ範囲」の項記載の文字のみに拘泥することなく、考案の性質、目的または説明書のその他の項の記載事項および添付図面の記載をも勘案して、実質的に考案の要旨を認定すべきである。
実用新案の考案の要旨の認定。
旧実用新案法(大正10年法律97号)22条1項2号,旧実用新案法施行規則(大正10年農商務省令34号)1条,旧実用新案法施行規則(大正10年農商務省令34号)2条
判旨
実用新案の権利範囲を確定するにあたっては、登録請求の範囲の記載の文字のみに拘泥することなく、説明書や図面の記載を勘案して実質的に考案の要旨を認定すべきである。また、出願時の公知技術を除外して新規な考案の趣意を明らかにすべきである。
問題の所在(論点)
実用新案の権利範囲(考案の要旨)を確定する際、登録請求の範囲の記載に限定されるか。また、公知技術との関係でどのように要旨を認定すべきか。
規範
実用新案権の効力の範囲は、登録請求の範囲の記載を判断の有力な資料とすべきであるが、記載の文字のみに拘泥すべきではない。考案の性質、目的、説明書および添付図面全般の記載を勘案し、実質的に考案の要旨を認定すべきである。さらに、出願当時すでに公知・公用であった部分は除外して、新規な考案の趣意を明らかにしなければならない。
重要事実
被上告人の登録実用新案「液体燃料燃焼装置」の登録請求の範囲には、「燃料排出口(6)および案内皿(5)が回転しない」という構成が明記されていなかった。しかし、説明書の別項目や図面にはこれらが回転しない旨の表示があった。一方、回転皿を用いる燃焼器自体は出願前に既に公知であった。原審は、上告人の製品が被上告人の権利範囲に属すると判断したが、燃料霧化の構造・作用効果の相違に関する上告人の主張を十分に審理しなかった。
あてはめ
本件では、登録請求の範囲に「回転しない」旨の記載がないとしても、図面等によりその構造が示されており、燃料霧化に不可欠な要件である。また、回転皿自体は公知技術であるから、本件の新規性は「回転しない燃料排出口および案内皿」という点に認められるべきである。上告人の製品がこれと主たる要旨を異にする(燃料の微細化工程が異なる等)のであれば、権利範囲には属さない。原審はこれらの相違を精査せずに同一の作用効果であると断定しており、審理不尽といえる。
結論
実用新案の権利範囲は、登録請求の範囲外の記載や公知技術を考慮して実質的に認定されるべきであり、その審理を尽くさなかった原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
特許法70条1項・2項(文言主義)の解釈の前身とも言える判例。現在の実務では特許請求の範囲の記載を基礎とするのが原則だが、本判決は、文言の形式的解釈ではなく発明・考案の本質的(実質的)な把握を重視する姿勢を示す。明細書・図面による文言解釈の指針として参照される。
事件番号: 昭和30(オ)863 / 裁判年月日: 昭和33年8月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】発明の新規性を判断する際の発明の技術的範囲の確定について、特許請求の範囲の記載を基準としつつも、明細書全般(発明の詳細な説明等)の記載を参酌して判断することは適法である。 第1 事案の概要:上告人の本件特許出願(昭和24年第10897号)に対し、特許庁は先行する特許(第140115号)に基づき新規…