商標が類似する理由の説明については、裁判所は当事者の主張にとらわれない。
商標が類似する理由の説明につき裁判所は当事者の主張にとらわれるか。
商標法2条1項9号,民訴法191条2項,民訴法186条
判旨
商標の類似性判断において、裁判所は当事者の主張する類似理由に拘束されず、基本構成の共通性から外観・観念の紛らわしさを認定できる。
問題の所在(論点)
商標法上の類似性判断において、二重の同心円という共通の基本構成を有する場合に、細部の意匠の差異を超えて「外観および観念」の類似が認められるか、また裁判所が当事者の主張に拘束されるか。
規範
商標の類似性の有無を判断するにあたり、裁判所は当事者の主張する具体的な類似理由の構成にとらわれることなく、対比される両商標の構成要素から、外観、称呼、観念等に基づき客観的に判断すべきである。
重要事実
被上告人は、二重の同心円の間を塗り潰した「蛇の目」印の登録商標を有していた。これに対し、上告人は「イ」号標章として、塗り潰された太い円形の輪郭と、これと同心円をなす藤の花を図案化した輪の図形を組み合わせて使用した。被上告人は、上告人の標章が自らの登録商標と類似するとして、商標権侵害を主張した。
あてはめ
被上告人の商標は「蛇の目」と呼ばれる二重同心円の基本図形から成る。上告人の標章は内側の円に藤の花の意匠を施しているものの、外側の太い円形輪郭と内側の輪という構成は、二重の同心円を基本とする点で被上告人の商標と共通する。このような基本構成の共通性は、観察者に与える全体的な印象において、外観および観念の混同を生じさせる。したがって、細部に多少の差異があっても、両者は紛らわしいものといえる。
結論
本件の両商標は外観および観念において紛らわしく、類似するものと認められる。よって、上告人の行為は商標権を侵害する。
実務上の射程
図形商標の類似判断において、主要な構成部分(基本骨格)が共通していれば、細部の装飾的差異は類似性を否定する決定的な要素とはならないことを示している。また、類似理由の提示について裁判所の裁量を認めており、実務上、請求原因事実としての類似性の主張を広く捉える根拠となる。
事件番号: 昭和34(オ)448 / 裁判年月日: 昭和35年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商標の類似性判定において、過去に同一または類似の商標が併存していた事実があったとしても、現在の時点における類似性の認定を妨げるものではない。 第1 事案の概要:上告人は、自らの出願商標が引用商標と類似しないと主張して上告した。上告人は、出願商標の図形からは「トナカイ」または「鹿」の観念が生じるため…
事件番号: 昭和33(オ)766 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
「シンガーミシン」がその呼称で世界的に著名な裁縫機械として取引されているという取引事情の下では、裁縫機械を指定商品とする商標「シンカ」と「シンガー」とは類似するものと認むべきである。