判文参照
イ号物件が登録実用新案の技術的範囲に属するとした判断に経験則違反又は理由不備の違法があるとされた事例
実用新案法26条,特許法70条
判旨
実用新案の技術的範囲の解釈にあたり、構成要件の用語(「耕耘機」や「結合ピン」等)は、特段の理由がない限り、その物理的構造や機能的性質に基づく一般的意味に従って認定すべきである。
問題の所在(論点)
実用新案の構成要件の解釈において、一般的・物理的な機体の区別や用語の定義(「結合ピン」等)を離れて、対象物件の構成を認定することは許されるか。
規範
実用新案法等の知的財産権訴訟において、登録考案の技術的範囲を確定する際は、願書に添付した図面や明細書の記載を基礎としつつ、構成要件となる各用語の解釈は、その物の物理的構造、機能、および社会通念上の一般的意味を基準とする。文言の通常の意味と異なる特殊な解釈を採るには、明細書等の記載に照らした「特別の理由」を要する。
重要事実
本件実用新案は、耕耘機(A)とトレラー(B)を結合ピン(13)で連結し、その軸心線上で動力を結合する駆動装置である。原審は、対象物件(イ号物件)について、本来は後方部分と一体で耕耘機能を持たない部品群までを「耕耘機」の一部とみなし、さらに垂直伝動軸等を「結合ピン」に当たると判断して、登録考案と同一である(侵害にあたる)とした。これに対し上告人は、用語の解釈が不当であるとして争った。
事件番号: 昭和49(オ)175 / 裁判年月日: 昭和50年10月9日
【結論(判旨の要点)】実用新案権の技術的範囲の属否を判断するにあたり、構成要件の用語の意味は、特別の理由がない限り、通常の言語の用法に従って解釈すべきである。 第1 事案の概要:本件実用新案は、耕耘機とトレーラーを結合する「結合ピン」の軸心線上で動力結合を行う点に特徴があった。対象物件(イ号物件)は、耕耘機部分とトレー…
あてはめ
イ号物件を物理的に観察すると、着脱ピンによって耕耘機能を持つ前方部分と運搬機能を持つ後方部分が分離される。この前方部分こそが社会通念上の「耕耘機」であり、原審が「耕耘機」の一部としたギヤボックス等は後方部分と一体で耕耘機能に関わらない。また、「結合ピン」とは通常、物体同士を結合する棒状のものを指す。したがって、特段の理由がない限り、本件の「結合ピン」はイ号物件の「着脱ピン」に対応させるべきである。原審は、これら物理的・機能的実態に基づく解釈を排する「特別の理由」を何ら示さずに構成要件の充足を認めており、経験則違反または理由不備の違法がある。
結論
原審の用語解釈には理由不備等の違法があり、対象物件が本件実用新案の技術的範囲に属するとした判断は維持できない。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
文言解釈の原則を確認した事例。答案上は、文言の意義を解釈する際に、まず「一般的意味」から出発し、図面や明細書から導かれる「機能的・物理的実態」を重視すべきであることを論述する際の根拠となる。独自の拡張解釈を否定する方向で機能する。
事件番号: 昭和42(オ)804 / 裁判年月日: 昭和42年12月22日 / 結論: 棄却
原審の確定した本件実用新案の目的、作用効果および椅子の構造上被布をもつて緩衝体を被蓋してこれを固着する必要ある部分の範囲とを合せ考えれば、本件実用新案公報記載の「座席枠体」に椅子の背当部分も含まれるものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和50(オ)54 / 裁判年月日: 昭和50年5月27日 / 結論: 棄却
実用新案の明細書により当該実用新案の技術的範囲を確定するにあたつては、明細書中の「登録請求の範囲」の項記載の意味内容を具体的、正確に判断する資料として、右明細書の他の部分に記載された考案の構造及び作用効果を考慮することができる。
事件番号: 昭和39(オ)1469 / 裁判年月日: 昭和41年11月18日 / 結論: 棄却
実用新案法第二六条は特許法第七〇条を準用しているから、実用新案の技術的範囲、したがつてまたその権利の範囲は、登録請求の願書添付の明細書にある登録請求の範囲の記載に基づいて定められなければならないが、右範囲の記載の意味内容をより具体的に正確に判断する資料として、右明細書の他の部分に記載されている考案の作用効果を考慮するこ…