判旨
実用新案権の技術的範囲の属否を判断するにあたり、構成要件の用語の意味は、特別の理由がない限り、通常の言語の用法に従って解釈すべきである。
問題の所在(論点)
実用新案権の構成要件の解釈において、通常の言語の用法と異なる解釈(構成要件のあてはめ)が許されるか。具体的には、物理的に存在する着脱ピンではなく、別の伝動軸を「結合ピン」と同一視できるかが争点となった。
規範
実用新案権の侵害判断において、構成要件の用語は原則として通常の言語の用法に従って解釈されるべきであり、明細書や図面に示された「結合ピン」等の一般的用語を、特段の合理的理由なく特殊な構造部分(垂直伝動軸等)に読み替えてはならない。
重要事実
本件実用新案は、耕耘機とトレーラーを結合する「結合ピン」の軸心線上で動力結合を行う点に特徴があった。対象物件(イ号物件)は、耕耘機部分とトレーラー部分が「着脱ピン」で結合されており、一方でそれとは別に存在する「垂直伝動軸」部分で動力伝動を行っていた。原審は、この「垂直伝動軸」等が実用新案の「結合ピン」に該当すると判断し、構成要件を充足すると認めたため、被告が上告した。
あてはめ
最高裁は、物理的な構造として、本件の「着脱ピン」こそが耕耘機とトレーラーを結合する棒状のものであり、通常の用法における「結合ピン」に該当すると指摘した。原審が「垂直伝動軸」等を「結合ピン」と解釈した点については、何ら特別な理由が開示されておらず、通常の言語の用法を逸脱している。したがって、原審の認定は経験則に反するか、理由不備の違法があるといえる。
結論
原審の判断には、構成要件の解釈・あてはめにおいて理由不備等の違法があるため、原判決のうち上告人に支払を命じた部分を破棄し、大阪高裁に差し戻す。
実務上の射程
文言解釈の原則を確認した事例である。特許・実用新案の侵害訴訟において、用語の定義を拡張・変容させる場合には、明細書等の記載に基づく「特別の理由」が必要であり、安易な機能的・目的的な読み替えは許されないことを示唆している。
事件番号: 平成4(オ)364 / 裁判年月日: 平成5年10月19日
【結論(判旨の要点)】特許権侵害訴訟における特許発明の技術的範囲の確定について、出願過程等において特許権者が構成を制限したなどの特段の事情がない限り、明細書等の記載に基づいて客観的に画定されるべきである。 第1 事案の概要:特許権者(原告)は、インゴットの取付け位置に関する発明について特許権を有していた。被告が製造販売…
事件番号: 昭和39(オ)1469 / 裁判年月日: 昭和41年11月18日 / 結論: 棄却
実用新案法第二六条は特許法第七〇条を準用しているから、実用新案の技術的範囲、したがつてまたその権利の範囲は、登録請求の願書添付の明細書にある登録請求の範囲の記載に基づいて定められなければならないが、右範囲の記載の意味内容をより具体的に正確に判断する資料として、右明細書の他の部分に記載されている考案の作用効果を考慮するこ…
事件番号: 昭和50(オ)54 / 裁判年月日: 昭和50年5月27日 / 結論: 棄却
実用新案の明細書により当該実用新案の技術的範囲を確定するにあたつては、明細書中の「登録請求の範囲」の項記載の意味内容を具体的、正確に判断する資料として、右明細書の他の部分に記載された考案の構造及び作用効果を考慮することができる。
事件番号: 昭和40(行ツ)65 / 裁判年月日: 昭和43年4月12日 / 結論: 棄却
実用新案における構造の類否の判断にあたつて必然的にその構造を結果した目的および作用効果をも考慮することを許されないものではない。