特許権の通常実施権者との契約に基づき特許発明に係る製造機器を使用して製品を製造する行為は、製品の全部が通常実施権者に納入されている場合には、通常実施権者の実施権の行使としてされたものというべきであり、特許権を侵害しない。
特許権の通常実施権者との契約に基づいて特許発明に係る製造機器を使用して製品を製造する行為と特許権侵害の成否
特許法78条,第4章第2節権利侵害
判旨
特許権の通常実施権者から発明の実施を委託された第三者が、専ら実施権者の事業のために発明を実施する行為は、実施権の行使として適法であり、特許権を侵害しない。
問題の所在(論点)
通常実施権者から製造委託を受けた第三者による特許発明の実施行為が、特許権侵害となるか、あるいは実施権の行使として許容されるか。
規範
特許発明の実施が、実施権者との契約に基づき、かつ「専ら実施権者の事業のためにされたもの」と評価できる場合には、当該実施行為は通常実施権の行使として許容される範囲内にあるものと解する。
重要事実
特許権者である上告人は、Dと特許権を共有していた。Dは自らが代表を務めるE社に対し、上告人の同意を得て通常実施権を許諾した。E社は、鋳造加工を事業とする被上告人に対し、本件特許発明の技術的範囲に属する可能性のある本件金型を貸与し、製品の鋳造を委託した。被上告人は、製造した製品の全部をE社に納入し、代金を得ていた。上告人は、被上告人による金型の使用が特許権侵害に当たると主張し、損害賠償を請求した。
事件番号: 昭和41(オ)1360 / 裁判年月日: 昭和44年10月17日 / 結論: 棄却
一、旧意匠法(大正一〇年法律第九八号)九条にいう「其ノ意匠実施ノ事業ヲ為シ」とは、当該登録意匠につき同条による実施権を主張する者が、自己のため、自己の計算において、その意匠実施の事業をすることを意味し、かつ、それは、その者が、自己の有する事業設備を使用し、みずから直接に右意匠にかかる物品の製造、販売等をする場合だけでは…
あてはめ
被上告人は、通常実施権者であるE社との契約に基づき、貸与された金型を用いて製品を製造している。この製造行為によって得られた製品は、その全部がE社に対して納入されている。このような態様での実施は、被上告人が自らの事業として行っているのではなく、「専ら実施権者(E社)の事業のために」行われたものと評価できる。したがって、たとえ当該行為が特許発明の技術的範囲に属するとしても、実施権者による正当な実施権の行使の一環として行われたものと解するのが相当である。
結論
被上告人の行為は通常実施権の行使として適法であり、本件特許権を侵害したということはできない。損害賠償請求は棄却される。
実務上の射程
本判決は、実施権者が外部の製造リソースを利用する「下請け」や「製造委託」の場面における特許法上の評価を明確にした。答案上では、被告が実施権者から委託を受けている場合に、①委託契約の存在、②製品の全量納入等の実態から導かれる「専ら委託者の事業のため」という要件を検討することで、侵害の成否を判断する枠組みとして活用する。
事件番号: 平成3(オ)1007 / 裁判年月日: 平成5年2月16日 / 結論: 棄却
意匠登録を受ける権利を有しない者の出願により意匠登録がされた場合には、意匠法四条一項の新規性喪失の例外規定の適用があるときを除き、意匠登録を受ける権利を有する者であっても、当該意匠について意匠登録を受けることはできない。
事件番号: 平成6(オ)2311 / 裁判年月日: 平成9年10月28日
【結論(判旨の要点)】職務発明が特許法35条(改正前)の「職務発明」に該当するか否かは、発明が性質上使用者の業務範囲に属し、かつ発明をするに至った行為が従業員の職務に属するかを基準に判断されるべきである。本件では、他社の施設利用等があったとしても、実質的に使用者の業務として行われたものである以上、職務発明に該当する。 …