甲が乙の営業を手伝つていたなど判示の事情のもとで、甲が乙の営業権を侵害したとして損害賠償義務を負う場合、右賠償額を算定するには甲乙各自の営業に対する寄与度を参酌することができる。
営業権侵害による損害賠償額の算定につき右営業に対する当事者の寄与度を参酌した事例
民法709条
判旨
営業の主宰者である被承継人に対し、無償で譲り受けた建物を売却・取壊しさせて営業を不能ならしめた行為は、営業権(営業上の利益)を侵害する不法行為を構成する。その損害額の算定にあたっては、主宰者と補助者の営業に対する各自の寄与度を参酌すべきである。
問題の所在(論点)
建物所有権を適法に取得した者が、当該建物で行われていた他人の営業を不能にした場合、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任を負うか。また、その損害額の算定において関係者の寄与度を参酌できるか。
規範
特定の営業を主宰する者の当該営業上の利益(営業権)は、不法行為法上の保護を受ける法益であり、これを侵害して営業を不能ならしめた者は損害賠償責任を負う。また、侵害による損害額を認定するに際しては、当該営業に対する関係者の寄与度を考慮して合理的に算定すべきである。
重要事実
上告人の被承継人EはD手芸店を主宰し、被上告人B1がこれを手伝っていた。B1はEから本件建物及び借地権を無償で譲り受けたが、これを被上告人B2工務店に売却し、本件建物を取り壊させた。これによりEの営業は不能となり、損害が発生した。B2工務店への売買代金には営業補償金1,171万5,000円が含まれていた。
あてはめ
B1は建物の所有権を得ているが、Eが営業を主宰していた以上、建物取壊しにより営業を不能にしたことはEの営業権を侵害するものといえる。もっとも、損害額については、売買代金に含まれる補償金全額ではなく、営業主宰者であるEとこれを手伝っていたB1の各自の寄与度を参酌すべきである。原審が寄与度を考慮して損害額を800万円と認めた判断は、不法行為制度の趣旨に照らし正当である。なお、買主であるB2工務店については、営業権侵害の故意・過失が認められないため責任を負わない。
結論
B1によるEの営業権侵害を認め、寄与度を参酌して算定された損害賠償請求を一部認容した原審の判断を維持し、上告を棄却する。
実務上の射程
営業権という事実上の利益が不法行為の保護対象になることを前提に、損害額の算定において「寄与度」による修正を認めた点に実務上の意義がある。答案では、債権侵害や事実上の利益侵害の事案において、被害者側の事情を考慮した損害の公平な分担を論じる際の参考となる。
事件番号: 令和3(受)2001 / 裁判年月日: 令和5年10月23日 / 結論: 破棄自判
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