不特定物の売買においては、特段の事情のないかぎり、目的物が特定した時に買主に所有権が移転するものと解すべきである。
不特定物の売買における目的物所有権移転時期
民法176条,民法401条2項
判旨
不特定物売買における所有権は、特約のない限り目的物が特定した時に移転し、債権者が相殺により自己の債権の満足を図る行為は、第三者が不利益を被っても特段の事情がない限り違法な債権侵害とはならない。
問題の所在(論点)
1. 不特定物売買における目的物の所有権移転時期(民法401条2項の解釈)。 2. 債権者・債務者間の相殺契約が、契約当事者以外の第三者の債権を侵害するものとして不法行為(民法709条)を構成するか。
規範
1. 不特定物の売買においては、別段の特約がない限り、民法401条2項に基づき目的物が特定した時に所有権が買主に移転する。 2. 債権者が債務者との間で相殺契約を締結し自己の債権の満足を図る行為は、私法上の正当な権利行使であり、特段の事情がない限り、それにより第三者が不利益を被ったとしても、当該第三者の債権を侵害する違法な行為とはいえない。
重要事実
上告人は、訴外山田に対する債権を有していたが、被上告人が山田との間で、被上告人の山田に対する債権と、被上告人の山田に対する債務(代金債務等)を相殺する契約を締結した。この相殺により、上告人は山田からの債権回収が困難になる等の不利益を被った。また、本件取引の対象は不特定物であり、その所有権移転時期や、相殺契約が上告人の債権を違法に侵害するかが争点となった。
あてはめ
1. 所有権移転について、本件売買対象は不特定物であるが、売主に所有権を留保する特約がない以上、目的物が特定された時点で所有権は当然に買主に移転したと認められる。 2. 債権侵害について、被上告人が自己の債権を保全するために山田との間で相殺契約を締結したことは、自己の権利行使の範囲内である。上告人が結果的に損失を被ったとしても、それは自由競争の範囲内であり、信義則に反するような特段の事情も認められないため、違法な債権侵害には当たらない。
結論
1. 不特定物売買の所有権は、特約がなければ特定時に移転する。 2. 本件相殺契約は権利行使の範囲を逸脱したものではなく、不法行為(債権侵害)は成立しない。
実務上の射程
不特定物売買の所有権移転時期に関する原則的判断を示すとともに、債権侵害の違法性判断において、単に第三者が不利益を受けるだけでは足りず、権利行使の範囲を逸脱するなどの特段の事情を要することを明らかにした。物権法・不法行為法双方の基礎論点として重要である。
事件番号: 昭和32(オ)331 / 裁判年月日: 昭和36年4月28日 / 結論: 棄却
売買の目的物の価格が謄貴した場合に、契約価格と履行期における市価との差額は、債務不履行により通常生ずべき損害と解すべきである。