死刑の量刑が維持された事例(オウム真理教地下鉄サリン殺人等事件)
判旨
被告人が関与した一連の犯行は、教団の組織防衛等を目的として組織的かつ計画的に行われたものであり、その罪質は極めて反社会的で人命軽視も甚だしい。特に松本・地下鉄両サリン事件のような残虐かつ非人道的な犯行態様と、計25名という極めて重大な結果に照らせば、被告人が教祖の指示に従っていたことや謝罪・寄附等の情状を考慮しても、死刑の選択はやむを得ない。
問題の所在(論点)
刑法199条に基づく死刑の選択において、教祖の指示による犯行であることや、事後の謝罪・寄附等の被告人に有利な情状を考慮してもなお、死刑を科すことがやむを得ないといえるか。
規範
死刑の選択が許されるか否かは、犯行の性質、動機、態様、特に殺意の強弱、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪刑均衡の観点からも、一般予防の観点からもやむを得ないといえる場合に限定される(いわゆる永山基準)。
重要事実
被告人はオウム真理教幹部として、(1)弁護士一家殺害事件、(2)松本サリン事件、(3)地下鉄サリン事件、(4)その他の殺人・殺人未遂・逮捕監禁致死等に関与した。被告人は教団幹部の立場で重要な役割を果たし、自ら手を下して殺害(一家殺害事件)したり、サリン合成等の不可欠な役割を積極的に担ったりした。結果、一連の犯行による死者は合計25名に及び、今なお深刻な健康被害に苦しむ負傷者も多数存在する。
あてはめ
本件各犯行は教団の組織防衛等を目的とした法治国家に対する挑戦であり、極めて反社会的である。特にサリンを用いた犯行は残虐かつ非人道的であり、25名もの命が奪われた結果は他に類を見ないほど重大である。被告人は教祖の指示に従った立場とはいえ、犯行遂行に不可欠かつ重要な役割を積極的に果たしており、刑事責任は極めて重大といえる。遺族等の処罰感情も峻烈であり、社会に与えた衝撃も大きい。これらの事情に照らせば、謝罪の意思表明や前科がないこと等の有利な事情を最大限考慮しても、極刑は免れない。
事件番号: 平成19(あ)1480 / 裁判年月日: 平成23年11月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】教団幹部として、松本・地下鉄両サリン事件を含む複数の組織的な無差別殺人等の重要な役割を果たした被告人に対し、死刑を適用した一審・二審の判断を是認した事例。 第1 事案の概要:オウム真理教幹部である被告人は、(1)弁護士に対するサリン滴下(傷害)、(2)松本サリン事件(殺人・同未遂)、(3)VX使用…
結論
被告人に対する死刑の判決は、罪刑均衡および一般予防の観点からやむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
多数の被害者を生じさせた組織的テロ・大量殺人事件において、主犯(教祖)の指示による従属的な側面がある場合であっても、役割の重要性や結果の甚大さが圧倒的である場合には、死刑の選択が正当化される。
事件番号: 平成18(あ)1909 / 裁判年月日: 平成23年2月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】地下鉄サリン事件(東京地下鉄サリン散布事件)における殺人罪及び殺人未遂罪等の成否、並びに極刑(死刑)適用の正当性。 第1 事案の概要:被告人は、教団の組織的・計画的な犯行として、白昼の通勤時間帯に、不特定多数の乗客・職員が利用する東京都内の地下鉄車両内において、極めて毒性の強い化学兵器であるサリン…
事件番号: 平成16(あ)1394 / 裁判年月日: 平成21年12月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】極めて重大かつ非人道的な組織的犯罪において、被告人が犯行計画の具体的な指示説明を行うなど不可欠な役割を果たした場合には、真摯な反省等の情状を考慮しても、死刑の選択はやむを得ない。地下鉄サリン事件等の重大性、組織的・計画的な犯行態様、及び被告人の中心的役割を重視した判断である。 第1 事案の概要:オ…
事件番号: 平成15(あ)1404 / 裁判年月日: 平成19年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決文の文字化けにより正確な判旨の特定が困難であるが、文脈上、オウム真理教事件(地下鉄サリン事件等)に関し、組織的かつ計画的な大量殺人等の極めて凶悪な事案において、被告人の役割や動機を考慮しても死刑判決が正当化されることを示したものである。 第1 事案の概要:被告人は教団組織の幹部として、教祖らの…
事件番号: 平成16(あ)310 / 裁判年月日: 平成20年2月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、極めて残虐かつ非人道的な無差別大量殺人事件において、実行行為の中核を担った者の刑事責任は、教団幹部の指示があった等の事情を考慮しても死刑の選択がやむを得ないほど重大である。 第1 事案の概要:オウム真理教幹部である被告人は、他の幹部らと共謀し、地下鉄…