1 保護処分決定で認定された日には非行事実の存在が認められないが,これと異なる日に同一内容の非行事実が認められ,両事実が両立しない関係にあって事実の同一性が認められる場合には,少年法27条の2第2項により保護処分を取り消さなければならないときには当たらない。 2 保護処分取消し申立て事件において,事実の同一性のある範囲内で保護処分決定と異なる非行事実を認定するに当たり,審判期日で申立人にその事実の要旨を告げて陳述を聴くなどした原々審の審判手続は,申立人に対し,十分に防御の機会を与えているということができる。
1 保護処分決定で認定された日には非行事実の存在が認められないが,これと異なる日に事実の同一性のある範囲内で同一内容の非行事実が認められる場合と少年法27条の2第2項による取消しの要否 2 保護処分取消し申立て事件において,事実の同一性のある範囲内で保護処分決定と異なる非行事実を認定するに当たり,申立人に対して十分に防御の機会を与えているとされた事例
(1,2につき)少年法27条の2第1項,少年法27条の2第2項
判旨
少年法27条の2第2項の「審判に付すべき事由」には、保護処分決定で認定された非行事実と事実の同一性があり、構成要件的評価が変わらない事実も含まれる。したがって、事実の同一性が認められ、かつ適切な告知聴聞の機会が保障されている場合には、別日の非行事実を認定して取消しを否定できる。
問題の所在(論点)
保護処分取消し(少年法27条の2第2項)において、「審判に付すべき事由」の存否を判断する際、保護処分決定で認定された日とは異なる日に発生した非行事実を、事実の同一性の範囲内として認定し、取消しを否定することができるか。また、その際の適正手続の要件は何か。
規範
1. 少年法27条の2第2項にいう「審判に付すべき事由」とは、保護処分決定で認定された非行事実と事実の同一性があり、構成要件的評価が変わらない事実をも含む。両事実が両立せず、基本的事実関係において同一であれば、審判に付すべき事由の不存在(取消事由)には当たらない。 2. 事実の同一性がある範囲内で決定時と異なる非行事実を認定するには、対象者に告知聴聞の機会を与え、防御権を保障するに足りる審判手続を経ることを要する。
事件番号: 昭和59(し)20 / 裁判年月日: 昭和60年4月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法27条の2第1項に基づく保護処分の取消しが認められるためには、確定審判の非行事実の認定を覆すに足りる、審判権がなかったことを認め得る明らかな資料が必要である。本件では、当初の自白の任意性・信用性が高く、後出の否認供述や新証拠(ナイフ)に不自然な点があることから、同要件を充たさないと判断された…
重要事実
少年(当時)は、共犯者らと共謀し平成13年9月16日に強姦未遂を犯したとして中等少年院送致決定(本件保護処分決定)を受け、処分を終了した。その後、共犯者の刑事公判で被害者が「被害日は当初の供述より1週間前の同月9日であった」と供述を変遷させたため、申立人はアリバイがある等として保護処分取消しを申し立てた。原審は、16日の事実は認められないが9日の同一内容の事実は認められるとし、審判手続で告知聴聞の機会を与えた上で取消しを棄却した。
あてはめ
1. 本件の9日の事実は、16日の事実と被害者、場所、共犯者、態様等が共通し、時間帯も重なり、非両立の関係にあるから、基本的事実関係が同一で、事実の同一性が認められる。よって「審判に付すべき事由」は存在する。 2. 原々審は、審判期日冒頭で9日の事実の要旨を告知し、アリバイ立証を含む反証の機会を十分に与えている。処分から相当期間が経過していることを考慮しても、告知聴聞の機会は実質的に保障されており、防御権侵害はない。
結論
保護処分決定で認定された日と異なる日であっても、事実の同一性が認められ、かつ防御の機会が十分に与えられている以上、審判に付すべき事由がなかったとはいえず、本件保護処分を取り消す必要はない。
実務上の射程
刑事訴訟法上の訴因変更や事由認定の議論と並行するが、少年法特有の「審判に付すべき事由」の解釈を示す。事実の同一性の判断基準(非両立性・基本的事実関係の共通性)および、認定替えの際の告知聴聞(適正手続)の重要性を強調する答案構成で用いる。
事件番号: 平成7(し)7 / 裁判年月日: 平成7年2月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法27条の2第1項に基づく保護処分の取消しは、保護処分が継続中である場合に限り許され、処分終了後には認められない。同規定は少年を将来に向かって保護処分から解放することを目的とするものであり、少年の名誉回復を目的とするものではない。 第1 事案の概要:本件は、既に保護処分が終了した元少年が、保護…
事件番号: 平成2(し)141 / 裁判年月日: 平成3年5月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法27条の2第1項に基づく保護処分の取消しは、将来に向かって少年を保護処分から解放する手続であり、保護処分が継続中である場合に限り許される。 第1 事案の概要:少年らは保護処分を受けたが、その基礎となった非行事実が存在しないと主張して保護処分の取消しを求めた。しかし、抗告審の継続中に一部の申立…
事件番号: 平成4(し)103 / 裁判年月日: 平成4年12月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法27条の2第1項に基づく保護処分の取消しは、保護処分が現に継続中である場合に限り許され、少年の名誉回復を目的とするものではない。 第1 事案の概要:少年に対して保護処分の決定がなされ、その後に決定が確定した。その後、処分の基礎とされた非行事実が存在しなかったことが明らかにされた(と主張された…
事件番号: 昭和59(し)34 / 裁判年月日: 昭和59年9月18日 / 結論: 棄却
少年法二七条の二第一項による保護処分の取消は、保護処分が現に継続中である場合に限り許される。