弁済による代位により財団債権を取得した者は,同人が破産者に対して取得した求償権が破産債権にすぎない場合であっても,破産手続によらないで上記財団債権を行使することができる。 (補足意見がある。)
求償権が破産債権である場合において財団債権である原債権を破産手続によらないで行使することの可否
民法501条,破産法2条5項,破産法2条7項,破産法100条1項,破産法151条
判旨
弁済による代位により財団債権を取得した者は、自己の求償権が破産債権にすぎない場合であっても、破産手続によらないで当該財団債権を行使することができる。
問題の所在(論点)
弁済による代位により財団債権(破産法149条1項の給料債権等)を取得した者が、自身の取得した求償権が破産債権である場合に、破産手続によらずに(財団債権として)当該債権を行使できるか。代位弁済による原債権取得の性質が問題となる。
規範
弁済による代位の制度は、代位弁済者が取得する求償権を確保するために、本来消滅すべき原債権及び担保権を代位弁済者に移転させ、これを一種の担保として機能させるものである。したがって、実体法上求償権を行使し得る限り、これを確保するために原債権を行使することができ、求償権の行使が倒産手続上の制約を受けるとしても、原債権自体が当該手続で制約されていない限り、原債権の行使が求償権と同様の制約を受けるものではない。
重要事実
破産会社Aの従業員の給料債権(本件給料債権)を代位弁済した上告人が、Aの破産管財人である被上告人に対し、破産手続によらずに財団債権としてその支払を求めた。原審は、本件給料債権が労働債権保護という政策目的の財団債権であることや、代位弁済者の求償権が破産債権であること(付随性)を理由に、破産手続によらなければ行使できないとして訴えを却下した。
あてはめ
代位弁済により移転した原債権は、求償権を確保するための担保的機能を有する。本件の原債権(給料債権)は破産法149条1項により財団債権の性質を有しており、本来の債権者であれば破産手続外で随時弁済を受けられるものである。他の破産債権者はもともと原債権者による財団債権行使を甘受すべき立場にあり、代位弁済者がこれを行使しても不当な不利益はない。また、労働債権保護という政策目的は、代位弁済者が原債権を取得することを妨げる理由にはならない。したがって、求償権が破産債権であっても、財団債権たる原債権の行使は制約されない。
結論
上告人は、求償権が破産債権であっても、弁済による代位により取得した本件給料債権を、破産手続によらないで財団債権として行使することができる。
実務上の射程
財団債権の代位弁済における行使方法を明示した重要判例。答案上は、求償権と原債権の「担保的機能」及び「別個の債権」という性質を強調し、原債権自体の法的性質(財団債権等)が代位によって失われないことを論拠とする。労働債権以外の財団債権の代位弁済にも妥当する。
事件番号: 昭和58(オ)881 / 裁判年月日: 昭和61年2月20日 / 結論: 破棄差戻
代位弁済者が債権者から代位取得した原債権又はその連帯保証債権の給付を求める訴訟において、裁判所が請求を認容する場合には、求償権の額が原債権の額を常に上回るものと認められる特段の事情のない限り、主文において、請求を認容する限度として求償権を表示すべきである。