1 消費者契約法10条は,憲法29条1項に違反しない。 2 賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料の支払を約する条項は,更新料の額が賃料の額,賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り,消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらない。
1 消費者契約法10条と憲法29条1項 2 賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料の支払を約する条項の消費者契約法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」該当性
(1,2につき)消費者契約法10条,(1につき)憲法29条1項,(2につき)民法第3編第2章第7節 賃貸借
判旨
賃貸借契約における更新料条項は、額が高額に過ぎる等の特段の事情がない限り、消費者契約法10条により無効とはならない。更新料は賃料の補充や契約継続の対価としての性質を有し、経済的合理性や社会的慣記があるため、直ちに信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものとはいえない。
問題の所在(論点)
居住用建物の賃貸借契約における更新料条項が、消費者契約法10条に規定する「信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項」として無効になるか。
規範
1. 更新料条項は、任意規定(民法601条等)に含まれない義務を賃借人に課す点で、消費者契約法10条前段の「義務を加重するもの」に該当する。 2. もっとも、同条後段の「信義則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に該当するかは、条項の性質、契約の経緯、情報の質・量や交渉力の格差等を総合考慮して判断すべきである。 3. 更新料は賃料の補充・前払、契約継続の対価等の複合的性質を有し、経済的合理性がある。したがって、更新料条項が契約書に一義的かつ具体的に記載されている場合、更新料の額が賃料や更新期間に照らし高額に過ぎる等の特段の事情がない限り、同条後段により無効とはならない。
重要事実
賃借人Xは、賃貸人Yとの間で、期間1年、賃料3万8000円、更新料を賃料2か月分(1年ごとに発生)とする居住用建物の賃貸借契約を締結した。Xは計3回の更新を経て更新料を支払ったが、その後、当該更新料条項は消費者契約法10条等に反し無効であると主張して、支払済み更新料の返還(不当利得返還請求)を求めて提訴した。
あてはめ
本件条項は契約書に一義的かつ明確に記載されており、情報の質・量や交渉力に看過し得ない格差があるとはいえない。また、その内容は「1年間の更新に対し賃料2か月分」の更新料を支払うというものであり、更新料の額が賃料額や更新期間に照らして高額に過ぎるといった「特段の事情」は認められない。よって、消費者契約法10条により無効とすることはできない。
結論
本件更新料条項は有効であり、Xの更新料返還請求は棄却される。逆に、Yの未払更新料請求は認容される。
実務上の射程
居住用建物の更新料に関するリーディングケースである。答案上では、消費者契約法10条の二段階の検討(①任意規定との乖離、②信義則違反・一方的不利益)を明確に示す必要がある。具体的には「賃料の2か月分程度」であれば、本判例を射程として有効と論じるのが一般的である。
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