介護保険法上の指定居宅サービス事業者及び指定居宅介護支援事業者の各指定を府知事から受けた事業者は,不正の手段によってこれらを受けた場合であっても,そのことを理由とする各指定の取消しがされておらず,各指定を受けるに当たっての経緯も各指定を無効とするほどの瑕疵の存在をうかがわせるものではないなど判示の事情の下においては,市から受領した居宅介護サービス費及び居宅介護サービス計画費につき,介護保険法(平成17年法律第77号による改正前のもの)22条3項に基づく返還義務を負うものではない。 (補足意見がある。)
介護保険法上の指定居宅サービス事業者等の指定を府知事から受けた事業者が,不正の手段によって当該指定を受けた場合において,市から受領した居宅介護サービス費等につき介護保険法(平成17年法律第77号による改正前のもの)22条3項に基づく返還義務を負わないとされた事例
介護保険法(平成17年法律第77号による改正前のもの)22条3項,介護保険法(平成17年法律第77号による改正前のもの)41条1項,介護保険法(平成17年法律第77号による改正前のもの)77条1項6号,介護保険法(平成17年法律第77号による改正前のもの)84条1項7号,介護保険法41条6項,介護保険法46条1項,介護保険法46条4項
判旨
介護保険法22条3項に基づく介護報酬の返還義務が認められるためには、事業者が介護報酬の支払を受けたことに法律上の原因がないことを要する。指定申請時に不正の手段を用いたとしても、指定が取り消されず、かつ当該指定を当然無効とするほどの瑕疵がない限り、特段の事情がない限り支払の法律上の原因は失われない。
問題の所在(論点)
介護保険法上の事業指定を受ける際に不正の手段を用いた事実がある場合、当該指定に基づき支払われた介護報酬の受領は、同法22条3項にいう「偽りその他不正の行為」によるものとして、直ちに法律上の原因を欠き返還義務を生じるか。
規範
介護保険法22条3項は、事業者が偽りその他不正の行為により介護報酬を受けた場合の不当利得返還義務の特則である。したがって、同項に基づく返還義務が認められるためには、前提として事業者が介護報酬を受けたことに「法律上の原因」がないことを要する。行政庁による指定取消処分がなされておらず、かつ、指定に当然無効といえるほどの重大な瑕疵が認められない場合には、不正な手段により指定を受けたという一事をもって、直ちに法律上の原因がないということはできない。
重要事実
参加人(事業者)は、介護保険法上の事業指定を受ける際、管理者が常勤であるという基準を満たすため、実際には幼稚園事務長を兼務していたBの経歴を隠して申請し、指定を受けた。市は、当該指定に基づき介護報酬を支払った。その後、住民である被上告人が、不正手段による指定を前提とした介護報酬の受領は同法22条3項の「不正の行為」に当たり不当利得であるとして、市に対し参加人へ返還請求するよう求めて住民訴訟を提起した。なお、大阪府知事は本件指定を取り消していない。
あてはめ
本件において、参加人は大阪府知事から適法に本件各指定を受けた上で事業を行い、介護報酬を受領している。原審が認定した経歴秘匿等の不正手段があったとしても、それにより大阪府知事が指定取消処分(同法77条1項、84条1項)を行った事実はなく、また、当該申請経緯が指定を当然無効(客観的に明白な重大な瑕疵)とするものともいえない。よって、既に行われた返還分を除き、本件介護報酬の支払には依然として有効な指定という法律上の原因が存在する。したがって、法22条3項の返還義務の前提を欠く。
結論
事業者が不正手段で指定を受けたとしても、指定が有効に存続する限り、受領した介護報酬に法律上の原因がないとはいえず、返還請求は認められない。
実務上の射程
指定取消処分の有無を重視する判断であり、処分の遡及効が制限される場合や、取消しが行われない段階での住民訴訟等において、安易に公金支出の違法(不当利得)を認めない枠組みとして機能する。行政庁の裁量判断(取消しを行うか否か)を尊重する姿勢を示している点に注意が必要である。
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