表題部所有者の登記も所有権の登記もない土地を時効取得したと主張する者が,当該土地は所有者が不明であるから国庫に帰属していたとして,国に対し当該土地の所有権を有することの確認を求める訴えは,次の(1)〜(3)の事情の下では,確認の利益を欠く。 (1) 国は,当該土地が国の所有に属していないことを自認している。 (2) 国は,上記の者が主張する取得時効の起算点よりも前に当該土地の所有権を失った。 (3) 上記の者において,当該土地につき自己を表題部所有者とする登記の申請をした上で保存登記の申請をする手続を尽くしたにもかかわらず所有名義を取得することができなかったなどの事情もうかがわれない。
土地を時効取得したと主張する者が,当該土地は所有者が不明であるから国庫に帰属していたとして,国に対し当該土地の所有権を有することの確認を求める訴えにつき,確認の利益を欠くとされた事例
民訴法134条,民法239条2項
判旨
所有者不明の土地を民法239条2項により国庫に帰属させる措置(無主地帰属措置)につき、当該措置が行われたことのみを理由として、私人である上告人が当該土地の所有権取得を争い、確認を求める法律上の利益を肯定することはできない。
問題の所在(論点)
不動産が民法239条2項に基づき国庫に帰属したものとして扱われている場合、自己が所有権者であることの証明を欠いたまま、当該土地が国の所有に属さないことの確認を求める訴えに、確認の利益が認められるか。
規範
訴えの利益、特に確認の利益の有無は、対象となる権利関係を確定することが原告の現在の権利・法的地位に対する不安・危険を除去するために有効かつ適切であるか否かによって判断される。不動産の所有権確認訴訟において、被告に所有権がないことのみを主張し、自己の所有権取得を基礎付ける事実を主張・立証できない場合、当該確認を求めることは、自己の法的地位の不安定さを解消する有効な手段とは認められず、確認の利益を欠く。
事件番号: 昭和45(オ)939 / 裁判年月日: 昭和46年6月22日 / 結論: 棄却
時効により不動産の所有権を取得しても、その登記がないときは、時効完成後旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対し、所有権の取得を対抗できない(最高裁判所昭和三〇年(オ)第一五号、同三三年八月二八日第一小法廷判決、民集一二巻一二号一九三六頁)。
重要事実
1. 本件土地は、かつて所有者不明の土地とされ、明治時代の「地所処分規則」に基づき無主地として官有地に編入された。 2. 上告人は、本件土地につき、国(被告)の所有に属さないことの確認を求めた。 3. その根拠として上告人は、国庫帰属の前提となった「所有者不明」という判断が誤りであり、国への帰属措置は違法・無効であると主張した。 4. しかし、上告人自身が本件土地の所有権を取得したことを裏付ける具体的証拠(登記、売買、相続、時効取得等)については、特段の立証がなされていない。
あてはめ
1. 上告人は、本件土地が国(被告)の所有に属さないことを求めているが、本件土地が国に帰属した経過が「地所処分規則」に基づく無主地編入である以上、客観的には国が所有権者として登記または管理されている状態にある。 2. このような状況下で、上告人が本件土地の所有権を確認するためには、まず自己に所有権が帰属していることを主張・立証しなければならない。 3. 上告人の主張は、国の取得原因(無主地編入)の瑕疵を指摘するにとどまり、自己がいつ、いかなる原因で所有権を取得したかを明らかにしていない。 4. したがって、仮に国の所有権を否定したとしても、直ちに上告人が所有権者として登記申請等を行える地位に立つわけではなく、上告人の法的地位の不安定が解消されるとはいえない。
結論
本件土地が被告(国)の所有に属さないことの確認を求める訴えは、自己の所有権取得を立証しない限り、確認の利益を欠く不適法な訴えであり、却下を免れない。
実務上の射程
本判決は、無主地帰属(民法239条2項)が争われる事案において、原告側に厳しい立証責任(自己の所有権取得事実)を課すとともに、消極的確認訴訟の形式をとっても確認の利益の要件により門前払いされる可能性があることを示している。
事件番号: 昭和32(オ)235 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地の引渡しを受けた根拠が交換契約にあるとの主張について、立証が不十分であれば、当該契約に基づく占有の権原は認められない。事実認定に関する判断が判決の結論に影響しない事項である場合、上告理由は採用されない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告町との間で、町所有の土地(本件係争土地)と自己所有の土地…
事件番号: 昭和33(オ)633 / 裁判年月日: 昭和35年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の排斥理由を判決文に逐一記載する必要はなく、裁判所の専権に属する証拠の取捨判断及び事実認定に不合理がなければ適法である。 第1 事案の概要:本件土地の売買をめぐり、当事者間の契約が知事の許可を条件とする単純な売買契約であるか、それとも上告人が主張するような譲渡担保であるかが争われた。原審は、提…
事件番号: 昭和34(オ)726 / 裁判年月日: 昭和37年9月14日 / 結論: 破棄差戻
丙を代理人として、甲の先代から不動産を買い受けた乙が、丙にその所有権を移転する意思がないにも拘らず、たまたま右の売買契約書に買主名義が丙となつていた関係上、丙をして甲に対する所有権移転登記手続請求の訴を提起させ、その勝訴の確定判決に基づいて甲より丙に所有権移転登記を受けさせた場合には、民法第九四条第二項の法意に照し、乙…