時効により不動産の所有権を取得しても、その登記がないときは、時効完成後旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対し、所有権の取得を対抗できない(最高裁判所昭和三〇年(オ)第一五号、同三三年八月二八日第一小法廷判決、民集一二巻一二号一九三六頁)。
不動産所有権の時効取得と対抗要件
民法177条
判旨
不動産の取得時効が完成した後に旧所有者から譲受けて登記を経た第三者に対しては、時効取得者は登記がなければ所有権の取得を対抗できない。
問題の所在(論点)
不動産の取得時効完成後、登記がなされる前に当該不動産を取得し登記を経た第三者に対し、時効取得者が登記なくして所有権を対抗できるか(民法177条の「第三者」の範囲)。
規範
不動産の時効取得者は、時効完成前に現れた第三者に対しては登記なくして所有権を対抗できるが、時効完成後に旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対しては、民法177条の規定により、登記がなければ時効による所有権の取得を対抗できない。
重要事実
占有者(上告人)が対象不動産を時効により取得したが、その時効完成後に、旧所有者から当該不動産を譲り受け、かつ登記を備えた第三者が現れた。上告人は登記を欠いていたため、当該第三者に対して時効取得を主張できるかが争われた。
事件番号: 昭和33(オ)547 / 裁判年月日: 昭和34年4月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産を時効取得した占有者は、時効完成後に当該不動産を譲り受け登記を了した第三者に対し、登記がなければ時効による権利取得を対抗できない。また、当該第三者が時効取得の事実について悪意であっても、背信的悪意者と評価される特段の事情がない限り、同様である。 第1 事案の概要:1.上告人ら51名は、本件山…
あてはめ
本件では、上告人が時効により不動産の所有権を取得しているが、その登記は未了である。一方で、相手方は時効完成後に旧所有者から所有権を取得し、適法に登記を経ている。この場合、両者は二重譲渡に類似した対抗関係に立つものと解される。したがって、先に登記を備えた相手方が優先し、登記のない上告人は自らの所有権取得を相手方に主張することはできないと評価される。
結論
時効による不動産所有権の取得を登記なくして時効完成後の第三者に対抗することはできない。
実務上の射程
時効完成後の第三者は「第三者」(177条)に該当するという不動産時効取得の基本原則(いわゆる「177条の適用」の場面)を示す。ただし、当該第三者が背信的悪意者に該当する場合や、再度の時効完成が認められる場合には、この原則が修正される可能性があることに留意すべきである。
事件番号: 昭和35(オ)232 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 棄却
代金支払が契約の数ケ月後であるとの一事によつては、登記欠缺を主張しえない背信的悪意者とはいえない。
事件番号: 昭和47(オ)1188 / 裁判年月日: 昭和48年10月5日 / 結論: 棄却
一、入会部落の総有に属する土地の譲渡を受けた同部落の構成員は、右譲渡前にこれを時効取得した者に対する関係において、民法一七七条にいう第三者にあたる。 二、一筆の土地の一部を時効取得した場合でも、右土地部分の所有権取得につき登記がないときは、時効完成後旧所有者からこれを買い受けた第三者に対抗することができない。