一、入会部落の総有に属する土地の譲渡を受けた同部落の構成員は、右譲渡前にこれを時効取得した者に対する関係において、民法一七七条にいう第三者にあたる。 二、一筆の土地の一部を時効取得した場合でも、右土地部分の所有権取得につき登記がないときは、時効完成後旧所有者からこれを買い受けた第三者に対抗することができない。
一、入会部落の総有に属する土地を買い受けた同部落の構成員と民法一七七条の第三者 二、一筆の土地の一部の所有権時効取得と対抗要件
民法162条,民法177条,民法263条
判旨
不動産の時効取得者は、時効完成後の譲受人に対しては、登記がなければ時効取得による所有権の取得を対抗できない。これは、時効取得者が境界に関する誤信等の事情により登記の必要性を認識していなかった場合や、譲受人が元々当該土地を総有していた部落の構成員であった場合でも同様である。
問題の所在(論点)
1. 時効取得者が境界の誤信等により登記の必要性を認識していなかった場合、時効完成後の譲受人に対し無登記で対抗できるか。 2. 総有権者(入会部落)の構成員であった者が、当該土地を買い受けた場合、時効完成後の「第三者」に該当するか。
規範
民法177条は時効完成後の第三者との関係にも適用される。時効完成により所有権を取得した者は、その後、前所有者から当該不動産を譲り受けた第三者に対し、登記を経由しなければ、所有権の取得を対抗できない。また、総有形態の入会地の構成員は共有持分権を持たないため、構成員が当該土地を買い受けた場合であっても、時効完成後の第三者に該当する。
重要事実
上告人の祖父Eは、明治28年に買い受けた土地の隣接地(本件係争地)を、自らの所有地の一部と信じて占有を開始し、その後時効が完成した。上告人は相続によりその権利を承継した。一方、被上告人は、昭和24年に本件係争地を含む土地を総有部落から買い受け、昭和27年に登記を備えた。上告人は、被上告人との境界確認訴訟で敗訴するまで、係争地が他人の土地であることを知らず、登記の必要性を認識していなかった。
事件番号: 昭和23(オ)53 / 裁判年月日: 昭和24年9月27日 / 結論: 棄却
ある土地につき実質上地上権を有せず登記簿上地上権として表示されているに過ぎない者は、右土地につき時効により地上権を取得した者に対し、その登記の欠缺を主張することができない。
あてはめ
1. 民法177条の適用において、時効取得者が境界誤信等の事情により登記手続に思い至らなかったとしても、その主観的事情は結論を左右しない。本件上告人が登記を備えていない以上、時効完成後に譲り受け登記を具備した被上告人には対抗できない。 2. 入会部落の構成員は共有持分権や管理処分権を有しないため、構成員が土地を買い受けたとしても、不動産の共有者が買い受けた場合とは異なり、依然として「第三者」としての立場を維持する。したがって、被上告人は177条の第三者に該当する。
結論
時効取得者は、登記がなければ時効完成後の第三者に対し、所有権の取得を対抗できない。被上告人は「第三者」に該当し、登記を備えているため、上告人は敗訴を免れない。
実務上の射程
時効完成後の第三者(二重譲渡類似の関係)における登記の必要性を再確認するものである。時効取得者の善意・無過失といった主観的事情や、譲受人の属性(元構成員)が「第三者」性を否定する要素にならないことを示しており、一律に登記の先後で決する実務上の基準を堅持している。
事件番号: 昭和40(オ)654 / 裁判年月日: 昭和41年10月21日 / 結論: 棄却
地盤上に植栽された立木の所有権を取得した者は、明認方法等の対抗要件を備えないかぎり、右地盤(土地)を地上の右立木とともに買いうけ右土地についてその所有権移転登記を経由した第三者に対し、前記立木所有権取得を対抗することができない。
事件番号: 昭和33(オ)547 / 裁判年月日: 昭和34年4月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産を時効取得した占有者は、時効完成後に当該不動産を譲り受け登記を了した第三者に対し、登記がなければ時効による権利取得を対抗できない。また、当該第三者が時効取得の事実について悪意であっても、背信的悪意者と評価される特段の事情がない限り、同様である。 第1 事案の概要:1.上告人ら51名は、本件山…
事件番号: 昭和44(オ)56 / 裁判年月日: 昭和44年6月12日 / 結論: 破棄差戻
特定地域の土地が、甲乙間において、甲所有の丙地に含まれるか、乙所有の丁地に含まれるかが争われている場合には、甲がその主張の丙地について所有権取得登記を経由していなくても、乙はこの一事によつて甲の右土地に対する土地所有権取得を否定することはできない。
事件番号: 昭和50(オ)684 / 裁判年月日: 昭和50年12月23日 / 結論: 棄却
甲から所有権を譲り受けてその登記を経由した乙は、登記簿滅失による回復登記申請期間を徒過しても、乙の登記後甲から所有権を譲り受けた丙に対し、自己の所有権取得を対抗できる(昭和三四年七月二四日第二小法廷判決・民集一三巻八号一一九六頁参照)。