所得税法28条1項に規定する給与等の支払をする者が,その支払を命ずる判決に基づく強制執行によりその回収を受ける場合であっても,上記の者は,同法183条1項所定の源泉徴収義務を負う。 (補足意見がある。)
給与等の支払をする者が判決に基づく強制執行によりその回収を受ける場合における源泉徴収義務の有無
所得税法6条,28条1項,183条1項,民事執行法25条
判旨
給与等の支払を命ずる判決に基づき強制執行がなされた場合であっても、支払義務者は所得税法183条1項所定の源泉徴収義務を負い、後に国へ納付した税額相当分を受給者に請求できる。
問題の所在(論点)
給与等の支払を命ずる判決に基づく強制執行によって債務を履行した場合において、支払義務者は所得税法183条1項に基づく源泉徴収義務を負うか。強制執行時には源泉徴収が事実上不可能である点が、義務の成否に影響するかが問題となる。
規範
所得税法183条1項に規定する給与等の支払をする者は、その支払が任意弁済によるか強制執行によるかを問わず、同条項所定の源泉徴収義務を負う。支払の際に徴収が事実上不可能であっても、納付後に同法222条に基づき、徴収されるべき者に対して当該税額相当額を請求することが可能であるため、義務の発生は妨げられない。
重要事実
上告人らは被上告人に対し、賃金支払を命ずる仮執行宣言付判決に基づき、民事執行法122条2項の規定による強制執行(取立て等)を行った。被上告人はこの執行により賃金全額を支払った形となったが、後に税務署長から当該賃金に係る源泉所得税の徴収処分を受けた。被上告人は、上告人らから源泉徴収を行っていなかったため、所得税法222条に基づき、国に納付した税額相当額の支払を求めて上告人らを提訴した。
あてはめ
所得税法183条1項は給与等の支払の態様を区別しておらず、強制執行による回収であっても支払債務が消滅する以上「支払」に該当する。執行手続上、支払の際に税額を差し引くことができないとしても、同法222条が「徴収をしないで給与等の全額を支払った場合」の事後的な請求権を認めていることから、支払時の徴収不能を理由に源泉徴収義務そのものを否定することはできない。したがって、被上告人は徴収義務を負っていたといえる。
結論
給与等の支払義務者は、強制執行による支払であっても源泉徴収義務を負う。したがって、代わって納付した税額相当額を所得税法222条に基づき受給者に請求できる。
実務上の射程
給与債権の強制執行において、債務者は源泉所得税額を控除した額のみを支払うことはできず、一旦全額の執行を受けた上で、別途所得税法222条に基づき求償するという実務処理の指針となる。また、補足意見によれば、複数回の執行がある場合は、既発生の税額相当分を次回の執行に対する請求異議の事由とすることも可能とされる。
事件番号: 平成17(受)883 / 裁判年月日: 平成18年7月14日 / 結論: その他
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