一、源泉徴収による所得税についての納税の告知は、徴収処分であつて課税処分ではない。 二、支払者は、源泉徴収による所得税の徴収・納付義務の存否または範囲を争つて、納税の告知(徴収処分)に対する抗告訴訟を提起することができ、また、これにあわせてまたはこれと別個に、右徴収・納付義務の存否または範囲を訴訟上確定させるため、右義務の全部または一部の不存在確認の訴を提起することができる。 三、受給者は、源泉徴収による所得税を税務署長から徴収されまたは期限後に納付した支払者から、その税額に相当する金額につき求償権の行使を受けたときは、自己の負担すべき源泉納税義務の存否または範囲を争つて、支払者の請求を拒むことができる。 四、源泉徴収による所得税を税務署長から徴収されまたは期限後に納付した支払者の受給者に対する求償権は、右所得税の本税相当額についてのみ行使することができ、附帯税相当額には及ばない。
一、源泉徴収による所得税についての納税の告知の法的性質 二、源泉徴収による所得税についての納税の告知を受けた支払者が右所得税の徴収・納付義務の存否または範囲を争う場合の訴訟の形式 三、源泉徴収による所得税を徴収されまたは期限後に納付した支払者のする求償権の行使と受給者の支払拒絶 四、源泉徴収による所得税を徴収されまたは期限後に納付した支払者が受給者に対して行使しうる求償権の範囲
旧所得税法(昭和22年法律第27号)43条1項,旧所得税法(昭和22年法律第27号)43条2項,所得税法221条,所得税法222条,国税通則法15条,国税通則法36条,行政事件訴訟法3条,民訴法225条
判旨
源泉徴収による所得税の納税の告知は、課税処分ではなく徴収処分であって、支払者が不服申立てをせず告知が確定しても、受給者の源泉納税義務の存否や範囲には影響を及ぼさない。また、支払者が納付した不納付加算税等の附帯税は、支払者自身が負担すべきものであり、受給者に求償することはできない。
問題の所在(論点)
1. 支払者が納税の告知に対して不服申立てを行わず告知が確定した場合、受給者は支払者からの求償請求に対し、自身の源泉納税義務の不存在を主張して争うことができるか。 2. 支払者が納付した不納付加算税等の附帯税について、受給者に求償することができるか。
規範
1. 源泉徴収による所得税の税額は、所得の支払時に法律上当然に確定し(自働的確定方式)、税務署長の納税の告知は税額を確定させる課税処分ではなく、徴収処分としての性質を有する。したがって、告知の確定は受給者の実体的な納税義務を確定させるものではなく、受給者は支払者からの求償請求に対し、納税義務の不存在を主張して争うことができる。 2. 源泉徴収義務を怠ったことに基づく不納付加算税(旧源泉徴収加算税)および利子税等の附帯税は、納税者である支払者自身が負担すべきものであり、旧所得税法43条2項(現行222条)に基づく受給者への請求は認められない。
事件番号: 平成26(行ヒ)167 / 裁判年月日: 平成27年10月8日 / 結論: 破棄差戻
権利能力のない社団の理事長及び専務理事の地位にあった者が当該社団から借入金債務の免除を受けることにより得た利益は,① 同人が当該社団から長年にわたり多額の金員を繰り返し借り入れていたところ,当該社団がこのような貸付けを行ったのは同人が上記の地位にある者としてその職務を行っていたことによるものとみるのが相当であること,②…
重要事実
会社(被上告人)は、元役員(上告人ら)に対する賞与と認定された簿外定期預金の払出し等について、税務署長から源泉徴収漏れを指摘され、納税の告知を受けた。会社はこれに基づき本税および不納付加算税・利子税を国に納付したが、役員らには事後的に知らせるのみで、不服申立ての機会を適切に与えなかった。その後、会社は役員らに対し、納付した税額相当額の支払を求めて提訴した。
あてはめ
1. 納税の告知は徴収処分にすぎず、公定力をもって受給者の納税義務を確定させるものではない。そのため、会社が不服申立てをせず告知が確定したとしても、役員らが自身の納税義務の不存在を主張する機会は奪われておらず、憲法32条違反や信義則違反等の抗弁は成立しない。 2. 源泉徴収による所得税の納税義務者は支払者である。法定納期限までの納付を怠ったことで発生する不納付加算税や利子税は、納税義務者である支払者が負うべき制裁的・補完的な税目であり、受給者に負担を転嫁しうる法的根拠は存在しない。
結論
本税相当額の求償請求は認められるが、不納付加算税および利子税相当額の請求は認められない。また、本税相当額に対する遅延損害金の利率は、特段の合意がない限り、商事法定利率ではなく民事法定利率(年5分)による。
実務上の射程
源泉徴収関係における「納税の告知」の法的性質を徴収処分と明示した重要判例である。答案上では、支払者と受給者の内部関係における求償の可否を論じる際、附帯税の求償を否定する結論として引用されることが多い。また、告知に公定力がないことから、受給者が私法上の訴訟で実体的な義務を争えることを論証する際に用いる。
事件番号: 昭和43(オ)451 / 裁判年月日: 昭和43年12月6日 / 結論: 棄却
約束手形の振出人が当該手形上の債務を弁済した場合において、強制和議により右弁済前の時点にさかのぼつて右手形の裏書人の償還義務のみが一部免除されたときは、右償還義務は、右振出人の弁済により、右弁済額から右免除された債務額を控除した残額について消滅する。