約束手形の振出人が当該手形上の債務を弁済した場合において、強制和議により右弁済前の時点にさかのぼつて右手形の裏書人の償還義務のみが一部免除されたときは、右償還義務は、右振出人の弁済により、右弁済額から右免除された債務額を控除した残額について消滅する。
約束手形の振出人の弁済と裏書人の償還義務の一部免除
手形法77条1項4号,手形法47条1項
判旨
約束手形の裏書人が手形債務の免除を受けても振出人の支払義務には影響しないが、その後に振出人が弁済した場合、免除された裏書人の償還義務は免除額を控除した残額の限度で消滅する。
問題の所在(論点)
手形裏書人の債務が強制和議により一部免除された後、振出人が弁済した場合における、裏書人の残存債務の消滅範囲(手形法上の遡求義務と主たる債務の関係)。
規範
1. 手形裏書人が所持人から償還義務を免除されても、振出人の支払義務には影響を及ぼさない(手形法77条1項4号、47条1項)。これは強制和議による債務免除の場合も同様である。2. 振出人が手形債務を弁済した際、既に強制和議等で裏書人の償還義務が一部免除されていた場合、当該裏書人の償還義務は「弁済額から免除額を控除した残額」について消滅する。
重要事実
約束手形の裏書人について強制和議が成立し、手形金の償還義務が一部免除された。その後、手形振出人が手形債務の弁済を行った。この振出人の弁済が、一部免除を受けていた裏書人の償還義務の消滅範囲にどのような影響を及ぼすかが争点となった。
あてはめ
手形法上の合同責任(47条1項)の性質上、裏書人の免除は振出人の債務に影響しない(絶対的効力の否定)。一方で、振出人が弁済すれば裏書人の義務も消滅するのが原則である。しかし、既に裏書人の義務が一部免除されていた場合、振出人の弁済による裏書人の義務消滅の効力は、免除後の残債務に対してのみ及ぶと解すべきである。したがって、弁済額から既に免除された額を差し引いた残債務の範囲で、裏書人の義務は消滅することになる。
結論
裏書人の償還義務は、振出人による弁済額から免除された債務額を控除した残額について消滅する。
実務上の射程
手形上の主たる債務者と遡求義務者の責任の独立性を確認しつつ、二重利得を防止する観点から弁済の効力を合理的に限定した射程を持つ。和議法(現・民事再生法等)下の特則としてだけでなく、手形法上の個別免除と弁済の前後関係を整理する際の標準的な判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和59(オ)1453 / 裁判年月日: 昭和61年7月18日 / 結論: 棄却
約束手形の裏書のうち被裏書人の記載のみが抹消された場合、当該裏書は、裏書の連続の関係においては、右抹消が権限のある者によつてされたことを証明するまでもなく、白地式裏書となる。