一 特定物の売買においては、その物が引渡前空襲により滅失したとしても、売主の代金債権が消滅する理由がなく、従つてこれにより、その代金支払のために振り出された手形の振出が原因を欠くに至つたものとはいえない。 二 手形の裏書人が振出人の手形債務を保証する目的で裏書をした場合においても、裏書人の債務と振出人の債務とは別個の債務であるから手形債権者が振出人に対して、単に手形債権の確認判決を求め、また裏書人に対しては、手形債務についての給付の判決を求めてもなんら差支えない。
一 特定物の売買においてその物が引渡前空襲により滅失した場合と代金債務支払のために振り出された手形債権の効力 二 手形振出人に対し手形債務の確認とその手形債務を保証する目的でした手形裏書人に対しその債務について給付の判決を求めることの可否
民法534条,民法446条,手形法11条
判旨
裏書人が振出人の手形債務を保証する目的で裏書をした場合(隠れた手形保証)であっても、裏書人と振出人の債務は別個独立の債務である。したがって、所持人が振出人に債権確認、裏書人に給付判決を求めても適法であり、裏書人は独立して給付義務を負う。
問題の所在(論点)
裏書人が振出人の債務を保証する目的で裏書をした場合において、裏書人の債務は振出人の債務と別個独立したものとして扱うべきか。また、所持人が両者に対し、一方には確認判決、他方には給付判決を求めて提訴することの適否が問題となる。
規範
手形の裏書人が振出人の債務を保証する目的で裏書をした場合(いわゆる隠れた手形保証)においても、裏書人の債務と振出人の債務とは別個独立の債務である。そのため、所持人が振出人および裏書人に対し、それぞれ異なる訴訟物(手形債権の確認および給付の訴え)を選択して請求することは、手形法上の個別独立性の原則に照らし許容される。
重要事実
振出人である上告会社は、Dから特定物である蚊取線香を買い受け、その代金支払のために本件手形を振り出した。上告人Aは、上告会社の債務を保証する目的で受取人とともに本件手形に裏書をした(隠れた手形保証)。その後、目的物である線香は空襲により滅失したが、特定物売買における危険負担の関係上、代金債務は消滅していなかった。手形所持人である被上告人は、振出人に対しては手形債権の確認を、裏書人Aに対しては手形金の支払(給付)を求めて提訴した。
あてはめ
本件における裏書人Aの債務は、振出人の債務を保証する主観的意図があっても、手形法上は裏書人としての独立した責任を負うものである。振出人の代金債務は特定物売買の理(当時の法理)により消滅していないため、原因関係の消滅による抗弁は成立しない。さらに、裏書人と振出人の債務が別個である以上、原審が被上告人の請求に基づき、振出人には確認判決、裏書人Aには給付判決をそれぞれ言い渡したことは、手形債務の個別独立性に合致し適法である。これは裏書人に振出人の債務の範囲を超える負担を課す趣旨ではない。
結論
裏書人と振出人の債務は別個独立であるため、裏書人に対してのみ給付判決を求めることは適法であり、裏書人は手形上の義務を免れない。上告棄却。
実務上の射程
手形債務の独立性(手形法7条等参照)を確認する事案であり、いわゆる「隠れた手形保証」であっても裏書人としての形式的責任が緩和されるものではないことを示す。答案上は、裏書人の責任を論じる際、原因関係の抗弁が裏書人に及ぶか、あるいは裏書人が独自の責任を負うかという文脈で、債務の個別独立性を強調する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和51(オ)1187 / 裁判年月日: 昭和52年11月15日 / 結論: 破棄差戻
金銭を借用するにあたり、借主甲が、借受金の弁済確保のため甲の振り出す約束手形になんぴとか確実な保証人の裏書をもらつてくるよう貸主乙から要求されたため、丙に依頼して右手形に丙の裏書を受けたうえ、これを乙に手交して金銭の貸渡しを受けたという事実関係があるだけでは、右手形が金融を得るために用いられることを丙において認識してい…