金銭を借用するにあたり、借主甲が、借受金の弁済確保のため甲の振り出す約束手形になんぴとか確実な保証人の裏書をもらつてくるよう貸主乙から要求されたため、丙に依頼して右手形に丙の裏書を受けたうえ、これを乙に手交して金銭の貸渡しを受けたという事実関係があるだけでは、右手形が金融を得るために用いられることを丙において認識していた場合であつても、丙が手形振出の原因となつた甲乙間の消費貸借上の債務を保証したものと推認することはできない。
手形に保証の趣旨で裏書をした場合に原因債務についての民事保証を推認することの可否
民訴法185条,民法446条,手形法15条,手形法77条
判旨
他人の債務を保証する趣旨で手形に裏書をした者は、特段の事情のない限り、手形上の債務を負担する意思を超えて、その原因債務(消費貸借上の債務)までも保証する意思があったと推認することはできない。
問題の所在(論点)
他人の債務を保証する趣旨で約束手形に裏書をした者(いわゆる隠れた手形保証人)が、反対の意思表示がない限り、当然に原因債務(民法上の保証債務)についても責任を負うか。意思解釈による推認の限界が問題となる。
規範
人は他人の債務を保証するにあたり、特段の事情がない限り、自己の責任をなるべく狭い範囲にとどめようとするのが通常の合理的意思である。したがって、手形に保証の趣旨で裏書(隠れた手形保証)をしたからといって、当然に原因債務である消費貸借上の債務を保証する意思や、第三者に保証契約の締結を代理させる意思があったと推認することはできない。原因債務の保証成立には、手形上の責任を超えて保証する旨の特段の事情や、証拠に基づく厳格な事実認定を要する。
重要事実
振出人Dは貸主Eから融資を受ける際、確実な保証人の裏書を求められた。Dは上告会社代表者Fに対し、保証人の裏書をしてほしい旨を依頼し、Fはこれを承諾して自社名で本件手形に裏書をした。Dは本件手形をEに交付して500万円を借り受けた。その後、Eが上告会社に対し、手形上の責任のみならず、原因債務である消費貸借上の保証債務の履行を求めて提訴した事案。
あてはめ
原審は、上告会社が金融を得るための裏書であることを認識していた事実から、当然に原因債務の保証意思を推認したが、これは経験則に反する。裏書人の立場からすれば、手形上の責任を負う意思があるとしても、直ちに原因債務まで保証する意思があると解するのは、責任を限定しようとする通常の意思に反する。本件において、手形外の消費貸借契約を保証する旨の合意が別途成立した、あるいは代理権が付与されたといえる特段の事情は認定されていない。
結論
隠れた手形保証人が当然に原因債務(民法上の保証債務)を負担すると推認することは許されない。原因債務の保証の成否について審理を尽くさせるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
手形上の責任(手形法)と原因関係上の責任(民法)を峻別する実務上重要な判例。答案では「手形上の責任は免れないが、原因債務の保証については否定される」という構成で用いる。特段の事情がない限り、原因債務への責任波及は否定的に解すべきであることを論証する際に使用する。
事件番号: 昭和56(オ)851 / 裁判年月日: 昭和57年9月7日 / 結論: 棄却
約束手形の第一裏書人及び第二裏書人がいずれも振出人の手形債務を保証する趣旨で裏書したものである場合において、第二裏書人が所持人から手形を受戻したうえ第一裏書人に対し遡求したときは、第一裏書人は民法四六五条一項の規定の限度においてのみ遡求に応じれば足り、右の遡求義務の範囲の基準となる裏書人間の負担部分につき特約がないとき…