甲から白地裏書により乙に、乙から記名裏書により丙に、順次交付された手形が甲に返還され、かつ乙のなした裏書が適法に抹消された後において、甲がさきの白地裏書の記載をそのまま利用して、右手形を丁に譲渡したときは、甲は丁に対し、裏書人としての手形上の責任を負担する。
白地裏書人が手形を受戻した後、さきの白地裏書に記載した裏書を利用して右手形を第三者に譲渡した場合と裏書人としての責任の有無
手形法14条2項,手形法16条1項,手形法43条前段,手形法77条
判旨
以前に行った既存の白地式裏書を抹消せずに残したまま、これを利用して手形上の権利を移転させる意思で手形を交付し、被交付者が自己を被裏書人として補充した場合、交付者は裏書人としての責任を負う。
問題の所在(論点)
過去になされた自己の白地式裏書を抹消せず、これを利用して権利を移転させる意思で手形を交付した場合に、交付者は裏書人としての責任(手形法15条1項等)を負うか。交付時に新たな署名が必要かが問題となる。
規範
手形上の権利を移転させる意思に基づき、既存の自己による白地式裏書を存置・利用して手形を交付したときは、たとえ交付時に新たに裏書や補充をしていなくても、当該裏書の効力を発生させる意思があると認められる。したがって、当該交付者は有効な裏書人として、被補充者に対して手形上の義務を負担する。
重要事実
上告会社は、本件手形をD銀行に白地式裏書により譲渡した。その後、D銀行から手形の返還を受けたが、当該白地式裏書を抹消せずにそのまま残した。上告会社は、この既存の白地式裏書を利用して手形上の権利を移転させる意思で、被上告組合に手形を交付した。被上告組合は、当該白地欄に自己の名義を被裏書人として補充した。
あてはめ
上告会社は、過去にD銀行への譲渡のために適法に白地式裏書を行っており、手形面上には有効な署名が存在していた。手形返還後、上告会社はこの裏書をあえて抹消せず、権利移転の意思をもって被上告組合に交付している。これは既存の署名を現在の譲渡における裏書文言として利用する意思表示にほかならない。被上告組合がこの白地を補充した以上、形式的にも実質的にも上告会社による裏書が完成したものと評価できる。
結論
上告会社は裏書人としての責任を負う。したがって、被上告組合に対して手形上の義務を負担すべきである。
実務上の射程
裏書連続の適否や裏書人責任の有無が争われる場面で、過去の署名を利用した「流用」の有効性を肯定する根拠として活用できる。特に、手形が還流した際の再譲渡において、新たな裏書を省略した場合の処理に射程が及ぶ。
事件番号: 昭和37(オ)1154 / 裁判年月日: 昭和38年5月21日 / 結論: 棄却
手形法第一六条第一項にいう裏書の連続は、その形式によりこれを判定すれば足り、裏書が真正なものかどうかは問うところではない。