遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定する「相続させる」旨の遺言は,当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,当該「相続させる」旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係,遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから,遺言者が,上記の場合には,当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生ずることはない。
「相続させる」旨の遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合における当該遺言の効力
民法887条,民法908条,民法985条
判旨
特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言(いわゆる相続させる旨の遺言)は、特段の事情がない限り、遺産分割の方法の指定として、当該不動産を直ちに当該相続人に承継させる効力を有するが、受遺者が遺言者より先に死亡した場合には、代襲相続人に当然に承継されることはない。
問題の所在(論点)
遺言者が、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言をした場合において、当該相続人が遺言者の死亡以前に死亡したとき、その代襲相続人が当該遺産を承継するか。民法994条1項の類推適用の是非が問題となる。
規範
「相続させる」旨の遺言は、特段の事情のない限り、何らの地位の承継や受領の意思表示を要せず、直ちに当該遺産を当該相続人に承継させる効力を有する。もっとも、遺言者は、通常、特定の相続人との個人的関係に鑑みて遺言をなすものである。したがって、当該相続人が遺言者より先に死亡した場合には、当該遺言は、特段の事情がない限り、その効力を生じない(民法994条1項類推適用)。代襲相続人が当然に当該遺産を承継すると解することはできない。
重要事実
遺言者Aは、推定相続人の一人である子Bに対し、特定の不動産を「相続させる」旨の遺言を残した。しかし、BはAよりも先に死亡した。その後、Aが死亡し、Bの子であるC(Aの孫であり、Bの代襲相続人)が、当該遺言に基づき不動産の所有権を取得したと主張して争った。
あてはめ
本件遺言はBに対して不動産を「相続させる」とするものであり、遺言者AはBとの個別の親族関係を重視して遺言をなしたといえる。BがAより先に死亡した以上、本件遺言はその前提を欠くに至ったといえる。また、AがBの代襲相続人であるCに当該不動産を相続させる意思を有していたとみるべき「特段の事情」も、本件判決文からは特段認定されていない。したがって、民法994条1項の趣旨に基づき、本件遺言のうちBに係る部分は失効し、Cが当然に当該不動産を承継することはない。
結論
代襲相続人は、特段の事情がない限り、当該「相続させる」旨の遺言によって直接不動産を取得することはできない。
実務上の射程
本判例は「相続させる」旨の遺言の性質を実質的に遺贈と同様と捉え、代襲相続の不発生を確認した。実務上は、特定の相続人が先に死亡した場合に備えた「予備的遺言」の重要性を裏付ける判断となっている。
事件番号: 平成23(受)603 / 裁判年月日: 平成26年2月14日 / 結論: 破棄差戻
共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は,遺産確認の訴えの当事者適格を有しない。
事件番号: 昭和36(オ)201 / 裁判年月日: 昭和40年5月27日 / 結論: その他
相続放棄の申述についても、民法第九五条の適用がある。
事件番号: 平成7(オ)1993 / 裁判年月日: 平成10年2月27日 / 結論: 破棄自判
遺言によって特定の相続人に相続させるものとされた特定の不動産についての賃借権確認請求訴訟の被告適格を有する者は、遺言執行者があるときであっても、遺言書に当該不動産の管理及び相続人への引渡しを遺言執行者の職務とする旨の記載があるなどの特段の事情のない限り、遺言執行者ではなく、右の相続人である。