相続放棄の申述についても、民法第九五条の適用がある。
相続放棄の申述と民法第九五条の適用の有無。
民法95条,民法938条
判旨
共有持分確認の訴えにおいて、自己の持分を否定する者に対し自己の持分確認を求めることは適法だが、他者の共有持分を確認する訴えは訴えの利益を欠き不適法である。また、相続放棄は私法上の法律行為の性質を有するため、民法95条(錯誤)の規定が適用される。
問題の所在(論点)
1. 共有者の一人が、他の共有者に対して「他者の共有持分」の確認を求める訴えに、訴えの利益(民事訴訟法上の適法性)が認められるか。 2. 相続放棄という家庭裁判所の手続を要する行為に、民法95条の錯誤無効の規定が適用されるか。
規範
1. 共有持分確認訴訟の訴えの利益について:共有持分に争いがある場合、自己の持分を争う者を相手方として「自己の持分のみ」の確認を求めれば足りる。他の共有者に対し、その者の共有持分を確認することを求める訴えの利益は認められない。 2. 相続放棄と錯誤について:相続放棄は、家庭裁判所への申述により効力を生ずるが、その性質は私法上の財産法上の法律行為である。したがって、民法95条(錯誤)の規定の適用がある。
重要事実
上告人が、被上告人らに対し、自己(上告人)および被上告人ら各自の共有持分の確認を求めて訴えを提起した。また、被上告人らの一部が行った相続放棄について、錯誤による無効が主張された。原審は、他者の持分確認についても必要的共同訴訟にあたると解して審理を行い、相続放棄については錯誤(動機の錯誤)に当たらないとしてその効力を認めた。
事件番号: 昭和34(オ)726 / 裁判年月日: 昭和37年9月14日 / 結論: 破棄差戻
丙を代理人として、甲の先代から不動産を買い受けた乙が、丙にその所有権を移転する意思がないにも拘らず、たまたま右の売買契約書に買主名義が丙となつていた関係上、丙をして甲に対する所有権移転登記手続請求の訴を提起させ、その勝訴の確定判決に基づいて甲より丙に所有権移転登記を受けさせた場合には、民法第九四条第二項の法意に照し、乙…
あてはめ
1. 訴えの利益について:上告人が被上告人ら各自の持分確認を求める部分は、自己の権利保護に必要のない他人の権利関係の確認を求めるものであり、訴えの利益を欠く。したがって、必要的共同訴訟であることを前提とした原審の判断は誤りである。 2. 相続放棄と錯誤について:相続放棄は財産法上の行為であるから、錯誤規定の適用がある。本件では、相続放棄に関する錯誤は「単なる縁由(動機)」に関するものにすぎず、法律行為の要素に錯誤があるとはいえないため、放棄は有効と解される。
結論
1. 他者の共有持分確認を求める訴えは、訴えの利益を欠き不適法であるため却下される。 2. 相続放棄に錯誤の規定は適用されるが、本件の錯誤は動機の錯誤にすぎず、相続放棄は有効である。
実務上の射程
実務上、確認の訴えにおける「対象の選択」を厳格に捉える判例である。自己の持分権を確定するためであっても、他人の持分を確認することは紛争解決に直結しないため許されない。また、相続放棄の取消し・無効主張において、民法の総則規定(錯誤等)が適用されることを明示した点でも重要であり、答案上は相続放棄の有効性を争う場面での論拠となる。
事件番号: 昭和42(オ)535 / 裁判年月日: 昭和46年10月7日 / 結論: 棄却
一、一個の物を共有する数名の者全員が、共同原告となり、共有権(その数名が共同して有する一個の所有権)に基づき共有権の確認を求めているときは、その訴訟の形態は、固有必要的共同訴訟と解すべきである。 二、一個の不動産を共有する数名の者全員が、共同原告となり、共有権(その数名が共同して有する一個の所有権)に基づき所有権移転登…
事件番号: 昭和42(オ)861 / 裁判年月日: 昭和45年12月24日 / 結論: 破棄差戻
民訴法七一条に基づく参加があつた訴訟において、原告の請求について判断を欠く判決は違法であつて破棄を免れず、この瑕疵は、訴訟要件に準じ、職権をもつて調査すべきである。
事件番号: 昭和29(オ)490 / 裁判年月日: 昭和31年12月28日 / 結論: 棄却
契約解除のような相手方ある単独行為についても、通謀による虚偽の意思表示は成立し得る。
事件番号: 昭和40(オ)654 / 裁判年月日: 昭和41年10月21日 / 結論: 棄却
地盤上に植栽された立木の所有権を取得した者は、明認方法等の対抗要件を備えないかぎり、右地盤(土地)を地上の右立木とともに買いうけ右土地についてその所有権移転登記を経由した第三者に対し、前記立木所有権取得を対抗することができない。