契約解除のような相手方ある単独行為についても、通謀による虚偽の意思表示は成立し得る。
単独行為と通謀虚偽表示の成否
民法94条
判旨
通謀虚偽表示(民法94条1項)は、売買契約のような双方行為に限らず、相手方のある単独行為についても成立し得る。
問題の所在(論点)
民法94条1項(通謀虚偽表示)の規定が、契約のような双方行為だけでなく、解除のような「相手方のある単独行為」にも適用されるか。
規範
民法94条1項にいう「相手方と通じてした虚偽の意思表示」は、必ずしも双方行為(契約)に限定されるものではなく、相手方のある単独行為についても成立し得るものと解すべきである。
重要事実
上告人は、本件不動産の所有権確認および所有権移転登記の抹消を求めて被上告人を提訴した。その過程で、本件における契約解除の意思表示が通謀虚偽表示にあたるか否かが争点となった。なお、被上告人が前主の相続人として地位を承継したか等の事実関係については原審で十分な主張立証がなされていなかった。
あてはめ
民法94条1項が虚偽表示を無効とする趣旨は、相手方と通じて虚偽の外形を作出した者の真意を保護せず、取引の安全を図る点にある。この趣旨は、契約解除のような相手方のある単独行為において、相手方と通じて虚偽の解除の外形を作出した場合にも等しく妥当する。したがって、本件における契約解除が虚偽表示であるとした原審の判断に、法の適用上の誤りはない。
事件番号: 昭和30(オ)129 / 裁判年月日: 昭和31年10月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】表見代理の成否に関し、代理人と称する者に権限があると信ずべき正当な事由の有無は、契約締結当時の諸事情に基づき客観的に判断されるべきである。本件では、代理人と称する訴外Dに権限があると信じたことについて、相手方の代理人に正当な事由が認められるとした原審の判断が維持された。 第1 事案の概要:上告人を…
結論
相手方のある単独行為(本件では契約解除)についても通謀虚偽表示の規定は適用される。したがって、虚偽の解除は無効である。
実務上の射程
本判決は民法94条1項の適用範囲を単独行為に広げた重要判例である。司法試験においては、解除、相殺、追認などの相手方のある単独行為が通謀して行われた場合、本判決を根拠に「94条1項の類推適用」ではなく、同条の「直接適用」として論証を組み立てるべきである。
事件番号: 昭和34(オ)726 / 裁判年月日: 昭和37年9月14日 / 結論: 破棄差戻
丙を代理人として、甲の先代から不動産を買い受けた乙が、丙にその所有権を移転する意思がないにも拘らず、たまたま右の売買契約書に買主名義が丙となつていた関係上、丙をして甲に対する所有権移転登記手続請求の訴を提起させ、その勝訴の確定判決に基づいて甲より丙に所有権移転登記を受けさせた場合には、民法第九四条第二項の法意に照し、乙…
事件番号: 昭和29(オ)730 / 裁判年月日: 昭和32年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】取消権の行使は必ずしも明示的に行われる必要はないが、単に借受金を返済するから土地を返還してほしいという申入れがなされたにすぎない場合には、直ちに相手方の所有権取得を否認して取消権を黙示に行使したものとは認められない。 第1 事案の概要:親権者Fの代理人Dが、未成年者Eの所有する本件土地をGに売却し…
事件番号: 昭和30(オ)441 / 裁判年月日: 昭和32年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産売買の表見代理(民法110条等)において、相手方が本人に直接確認せず、委任状等の提示を求めなかったとしても、諸般の事情により代理権があると信じるにつき正当な理由が認められる場合がある。 第1 事案の概要:上告人(本人)所有の本件土地家屋につき、Dが上告人の代理人と称して被上告人(相手方)との…
事件番号: 昭和36(オ)201 / 裁判年月日: 昭和40年5月27日 / 結論: その他
相続放棄の申述についても、民法第九五条の適用がある。