遺言によって特定の相続人に相続させるものとされた特定の不動産についての賃借権確認請求訴訟の被告適格を有する者は、遺言執行者があるときであっても、遺言書に当該不動産の管理及び相続人への引渡しを遺言執行者の職務とする旨の記載があるなどの特段の事情のない限り、遺言執行者ではなく、右の相続人である。
遺言執行者がある場合における遺言によって特定の相続人に相続させるものとされた特定の不動産についての賃借権確認請求訴訟の被告適格
民法908条,民法1012条,民法1013条,民法1015条,民訴法第1編第3章当事者
判旨
「相続させる」旨の遺言により特定の不動産を承継した相続人がある場合、特段の事情のない限り、当該不動産に関する賃借権確認請求訴訟の被告適格を有するのは、遺言執行者ではなく当該相続人である。
問題の所在(論点)
「相続させる」旨の遺言の対象となった不動産について、第三者(または他の相続人)が権利確認を求める訴訟を提起する場合、遺言執行者は被告適格を有するか。
規範
「相続させる」旨の遺言は、遺産分割手続を経ずに相続開始と同時に当該不動産の所有権を移転させる性質を有する。そのため、遺言書に当該不動産の管理等を遺言執行者の職務とする旨の記載があるなどの特段の事情がない限り、遺言執行者は当該不動産の管理・引渡義務を負わない。したがって、当該不動産をめぐる権利確認訴訟においては、遺言執行者ではなく当該物件を取得した相続人が被告適格を有する。
重要事実
遺言者Dは、本件土地を長男Eと三男(被上告人)に各2分の1ずつ「相続させる」旨の遺言を残し、二男(上告人)を遺言執行者に指定して死亡した。三男は本件土地を占有していたが、遺言執行者である二男に対し、本件土地について自身が賃借権を有することの確認を求めて提訴した。
あてはめ
本件土地は「相続させる」旨の遺言により、Dの死亡時に直ちにEと被上告人が取得した。遺言書には遺言執行者が本件土地を管理・引渡すべき旨の特段の定めはなく、遺言執行者が管理義務を負う事情も認められない。そうである以上、本件土地の賃借権の存否を争うべき相手方は、所有権を取得した相続人であるE等であって、遺言執行者である上告人ではない。
結論
本件訴訟の被告適格を有するのは相続人であり、遺言執行者を被告とする訴えは被告適格を欠き不適法であるため、却下されるべきである。
実務上の射程
特定の財産を特定の相続人に帰属させる遺言がある場合の遺言執行者の職務権限(民法1012条1項)の限界を示す。訴訟上の被告適格を判断する際、当該財産の管理処分権が誰に帰属しているかを「相続させる」旨の遺言の法的性質から導く枠組みとして重要である。
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遺言執行者がある場合においては、特定不動産の受遺者から遺言の執行として目的不動産の所有権移転登記手続を求める訴の被告適格を有する者は、遺言執行者にかぎられ、相続人はその適格を有しない。