判旨
賃貸借の目的物である土地が譲渡された場合、賃借権が対抗力を有する限り、賃貸人としての地位は譲受人に移転し、譲渡人は賃貸借関係から脱退して賃貸人としての権利義務を失う。
問題の所在(論点)
不動産の賃貸人が賃貸借の目的物を第三者に譲渡した場合、譲渡人は引き続き賃貸人としての地位を保持するか、あるいは賃貸借関係から脱退するか。
規範
賃貸借の目的物である不動産が譲渡され、賃借人が対抗力を有している場合、特段の事情のない限り、賃貸人としての地位は法律上当然に譲受人に移転する。この結果、譲渡人は賃貸借関係から脱退し、賃貸人としての権利義務を有しない状態となる。
重要事実
本件土地の賃借人(上告人)は、罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づく賃借権を有しており、同法5条により10年間の対抗力を有していた。その後、賃貸人(被上告人)は昭和26年7月31日に本件土地を第三者である株式会社Dに譲渡した。
あてはめ
上告人は、特別法に基づく対抗力を有する賃借権を保持していた。そのため、被上告人が本件土地を株式会社Dに譲渡したことにより、賃貸人としての地位は譲受人である株式会社Dに移転したと解される。したがって、被上告人は本件土地の譲渡をもって賃貸借関係から脱退し、賃貸人としての権利義務を有しないこととなった。
結論
被上告人は賃貸借関係から脱退しており、賃貸人としての責任を負わない。したがって、上告人の請求は認められず、上告を棄却する。
実務上の射程
対抗力ある賃貸借において、目的物の譲渡に伴い賃貸人の地位が当然に移転することを認めた民法605条の2第1項を先取りする判断である。実務上は、賃料請求や修繕義務の履行を求める相手方が譲受人であることを確定させる際に活用する。
事件番号: 昭和28(オ)372 / 裁判年月日: 昭和30年11月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借権が対抗力を有する場合、賃貸借の目的物たる土地の譲受人は、当然に賃貸人たる地位を承継し、賃借人に対する義務を負う。 第1 事案の概要:被上告人(賃借人)は、本件土地について旧罹災都市借地借家臨時処理法10条に基づき、第三者に対抗できる借地権を有していた。上告人(譲受人)は、本件土地を譲り受けた…
事件番号: 昭和28(オ)197 / 裁判年月日: 昭和30年2月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産不法占有者は、不動産に関する物権の得喪変更について登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者(民法177条)に該当しない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人が所有権を有する土地を占有していた。上告人は、自らが罹災建物の借主であったと主張し、罹災都市借地借家臨時処理法の適用による借地権の…
事件番号: 昭和35(オ)1057 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借権の譲渡について賃貸人の承諾が得られない限り、民法612条に基づき、譲受人はその賃借権を賃貸人に対抗することができない。また、一時使用の賃貸借であることが確定された事案においては、借地法の適用を前提とする主張は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地の賃借権を譲り受けたと主張して賃…
事件番号: 昭和27(オ)1129 / 裁判年月日: 昭和30年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の強制疎開に際し、建物所有者が敷地の借地権をも買収の目的物とすることを承諾し、その補償価額を受領した場合には、賃借権は譲渡されたものと解され、借地権を喪失する。 第1 事案の概要:上告人は、本件強制疎開の実施にあたり、自己が所有する建物のほか、その敷地に対する借地権も買収の目的物とされた。上告…