罹災都市借地借家臨時処理法施行前に強制疎開跡地の借地権を譲り受けた者については、同法第九条、第三条および第四条の適用はない
罹災都市借地借家臨時処理法施行前の借地権譲受と同法の不適用
罹災都市借地借家臨時処理法9条,罹災都市借地借家臨時処理法3条,罹災都市借地借家臨時処理法4条
判旨
罹災都市借地借家臨時処理法の施行前になされた土地賃借権の譲受については、同法9条等の規定を適用して賃貸人の承諾があったものとみなすことはできない。
問題の所在(論点)
罹災都市借地借家臨時処理法の施行前に行われた賃借権の譲渡に対し、同法の承諾擬制規定を遡及的に適用し、賃貸人や第三者に対抗することができるか。
規範
法律はその施行前の事象に遡及して適用されないのが原則である。罹災都市借地借家臨時処理法においても、同法施行前になされた土地賃借権の譲受につき、同法9条、3条および4条を適用して賃貸人の承諾を擬制することは、根拠のない法律の遡及適用にあたり許されない。
重要事実
Dは土地所有者Eから本件土地を賃借し建物を所有していたが、昭和20年4月に強制疎開により建物が除却された。上告人は昭和21年3月、Dから本件土地賃借権の譲渡を受けたが、賃貸人Eの承諾を得られなかった。その後、罹災都市借地借家臨時処理法が施行された。上告人は、同法に基づき賃貸人の承諾があったものとみなされると主張して、土地取得者である被上告人に対し賃借権を対抗しようとした。
あてはめ
上告人がDから賃借権を譲り受けたのは昭和21年3月であり、罹災都市借地借家臨時処理法の施行前である。同法9条等の規定は施行後の事象を対象とするものであり、施行前に行われた譲受について賃貸人の承諾があったものとみなす根拠はない。したがって、上告人は賃貸人Eの承諾を得ていない以上、Eに対して賃借権の譲受を対抗できず、ひいては土地の譲受人である被上告人に対してもこれを対抗できない。
結論
法律の遡及適用は認められず、施行前の賃借権譲渡に承諾擬制規定は適用されない。上告人の請求は理由がない。
実務上の射程
法治主義における法律不遡及の原則を再確認する事例。特別法による権利保護や承諾擬制等の強力な効力を主張する場合であっても、その効力発生時期(施行時期)との前後関係が厳格に判断されることを示す。答案上は、時系列を精査し、法律施行前の事案に安易に条文を適用しないよう注意する際の根拠となる。
事件番号: 昭和29(オ)868 / 裁判年月日: 昭和30年12月20日 / 結論: 棄却
一 罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条の適用を受ける借地権者が同法施行後当該借地上に建物を建設しても、同条による借地権の対抗力は消滅するもの解すべきではない。 二 賃貸借の目的たる土地が駐留軍により接収されたため、賃借人に右土地を使用させる賃貸人の債務の履行が一時的に不能となつても、賃貸人は、事情の変更を理由として賃貸…