判旨
罹災都市借地借家臨時処理法2条の適用対象とならない賃借権については、登記や地上建物の登記といった対抗要件を備えない限り、その後の土地譲受人に対して賃借権を対抗することはできない。
問題の所在(論点)
臨時処理法の施行前に調停によって成立した賃借権について、同法2条の対抗力の規定が当然に遡及適用されるか、また、登記等の対抗要件を欠く場合に土地譲受人に対抗できるか。
規範
賃借権の対抗力は、原則として民法605条の登記、または借地法1条(当時)の登記ある建物の所有を要する。罹災都市借地借家臨時処理法(以下「臨時処理法」)2条が定める対抗力の特例は、同法の施行後に新たに発生した賃借権に対して当然に遡及適用されるものではなく、法定の要件を満たさない限り、一般原則に従い対抗要件の存否によって判断される。
重要事実
上告人は、訴外D・Eから賃借した土地上の建物を、昭和20年に防空法に基づき除却され、その際借地権を放棄した。その後、昭和21年8月6日に上告人とD・E間で本件土地を再賃貸する旨の調停が成立したが、当該借地権の登記はなく、地上に登記された建物も存在しなかった。臨時処理法が施行されたのは同年9月15日である。D・Eは、昭和23年11月13日に本件土地を被上告人へ譲渡した。上告人は、臨時処理法上の対抗力(またはその類推適用)を根拠に、譲受人である被上告人に対し賃借権を主張した。
あてはめ
本件賃借権は昭和21年8月6日の調停成立により発生したものであるが、当時、臨時処理法は施行(同年9月15日)されていなかった。原審は同法2条を当然適用したが、特段の根拠なく法律を遡及適用することは違法である。また、本件借地権については、登記が経由されておらず、地上に登記ある建物も存在しない。したがって、臨時処理法による対抗力の特例が適用されない以上、上告人は民法等の一般原則に基づく対抗要件を備えていないといえる。
結論
上告人は本件賃借権を被上告人に対抗し得ない。したがって、賃借権に基づき本件土地の引渡しを求める請求は認められない。
実務上の射程
法律の遡及適用の禁止という一般原則を確認するとともに、特別法(臨時処理法)の適用範囲外の事案では、借地権の対抗力はあくまで不動産登記法や借地借家法の原則的な対抗要件(登記)の有無によって決せられることを示す。答案上は、特別法の適用要件を厳格に解釈すべき場面での引用が考えられる。
事件番号: 昭和28(オ)26 / 裁判年月日: 昭和29年7月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】戦時罹災土地物件令により一時使用を目的とする権利を有していても、罹災都市借地借家臨時処理法施行後は同法所定の賃借の申出をしない限り借地権を取得できず、単なる権利行使の継続を暗黙の申出と解することはできない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地につき戦時罹災土地物件令に基づく「一時使用を目的とする…
事件番号: 昭和27(オ)306 / 裁判年月日: 昭和29年6月17日 / 結論: 棄却
罹災都市借地借家臨時処理法第二条に基く賃借権は当然対抗力をそなえ賃借権者は、これを侵害する者に対し妨害排除を請求することができる。