判旨
戦時罹災土地物件令により一時使用を目的とする権利を有していても、罹災都市借地借家臨時処理法施行後は同法所定の賃借の申出をしない限り借地権を取得できず、単なる権利行使の継続を暗黙の申出と解することはできない。
問題の所在(論点)
臨時処理法施行前に一時使用権を有していた者が、同法施行後に改めて賃借の申出を行わず、単に権利行使を継続していた場合に、同法2条の「賃借の申出」があったと認められ、同法上の借地権を取得できるか。
規範
罹災都市借地借家臨時処理法(以下「臨時処理法」)の施行前に、戦時罹災土地物件令に基づき土地の「一時使用を目的とする権利」を有する者であっても、同法施行後は、同法2条に規定される「賃借の申出」を適法に行わない限り、同法所定の借地権を取得することはできない。また、単に一時使用を目的とする権利を行使し続けるという事実のみをもって、同法2条の申出があったとみなすことはできない。
重要事実
上告人は、本件土地につき戦時罹災土地物件令に基づく「一時使用を目的とする権利」を有していた。その後、臨時処理法が施行されたが、上告人は同法2条に基づく明示的な賃借の申出を行わなかった。上告人は、同法施行後も引き続き土地の使用を継続していたことをもって、暗黙のうちに賃借の申出があったものと解し、臨時処理法上の借地権を主張して争った。
あてはめ
臨時処理法の制度趣旨に照らせば、同法2条の申出は借地権取得の要件として厳格に解されるべきである。上告人は一時使用を目的とする権利を有するに過ぎず、同法施行後に法所定の申出を行っていない。上告人が主張する「権利行使の継続」は、あくまで従前の一時使用権の行使に過ぎず、これを臨時処理法による借地の要望(賃借の申出)と同一視することはできない。したがって、暗黙の申出があったとは認められない。
結論
上告人は臨時処理法所定の借地権を取得しておらず、一時使用を目的とする権利を有するに過ぎないため、上告人の主張は認められない。
実務上の射程
戦後処理という特殊な場面の判例であるが、法律が一定の期間内に特定の申出を権利発生の要件としている場合、単なる事実上の状態の継続をもって「暗黙の申出」と認めることには消極的であるべきという規範として活用できる。
事件番号: 昭和26(オ)426 / 裁判年月日: 昭和29年7月20日 / 結論: 破棄差戻
土地の賃借人は、賃借地上にバラツクを所有する第三者に対し、賃借人であるというだけで(何等特別の事情なく)賃借権侵害を理由として土地明渡を求める権利を有するものではない。
事件番号: 昭和28(オ)326 / 裁判年月日: 昭和29年4月2日 / 結論: 棄却
正当に敷地を賃借して、現に建物を所有するか、若しくは、建物所有の目的で建築中の者があるときは、借地権及び建物につき登記がなくても、罹災都市借地借家臨時処理法第二条第一項但書の「その土地を、権原により現に建物所有の目的で使用する者があるとき」にあたる。
事件番号: 昭和32(オ)46 / 裁判年月日: 昭和33年5月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法施行前にされた土地賃借の申出は、同法2条所定の優先賃借の申出とは認められず、同法29条による存続期間経過後に優先賃借権を主張するには、法施行後に改めて申出を行う必要がある。 第1 事案の概要:上告人は、建物が滅失した土地について昭和21年3月頃に賃借の申出をしたが、これは…
事件番号: 昭和27(オ)306 / 裁判年月日: 昭和29年6月17日 / 結論: 棄却
罹災都市借地借家臨時処理法第二条に基く賃借権は当然対抗力をそなえ賃借権者は、これを侵害する者に対し妨害排除を請求することができる。