罹災都市借地借家臨時処理法第二条に基く賃借権は当然対抗力をそなえ賃借権者は、これを侵害する者に対し妨害排除を請求することができる。
罹災都市借地借家臨時処理法第二条に基く賃借権と妨害排除請求の許否
罹災都市借地借家臨時処理法2条,民法601条,民法第3篇第1章第2節
判旨
罹災都市借地借家臨時処理法2条1項に基づき設定された賃借権は、設定時に当然に対抗力を備え、第三者の侵害に対し妨害排除を求め得る物権的効力を有する特殊な性格の権利である。
問題の所在(論点)
罹災都市借地借家臨時処理法2条1項に基づき発生した賃借権が、登記等の対抗要件なくして第三者に対抗し、妨害排除を請求し得る物権的効力を有するか。また、同法に基づく権利行使が信義則に反し権利濫用となるか。
規範
罹災都市借地借家臨時処理法2条1項の規定に基づき、罹災当時の建物の借主がその敷地等について取得する賃借権は、設定された時に当然に対抗力を備える。これにより、当該賃借権を侵害するものに対しては妨害排除を請求し得る物権的な効力を帯有する特殊な性格の権利として解釈される。
重要事実
被上告人(原告)は、強制疎開により建物が除却された当時の建物の借主であった。被上告人は、罹災都市借地借家臨時処理法(昭和21年9月15日施行)に基づき、当該建物の敷地(本件土地)について賃借の申出を行った。これに対し上告人(被告)側は、被上告人の請求が「権利の上に眠っていた者」によるものであることや、民法1条(信義則・権利濫用)違反、あるいは対抗力がないこと等を理由に、賃借権の存否や妨害排除の可否を争い、上告した。
事件番号: 昭和29(オ)546 / 裁判年月日: 昭和31年7月17日 / 結論: 棄却
建築基準法第五五条の適用上建物の建設が不可能な程度に狭い借地でも、これにつき罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条の適用がないものと解すべきでない。
あてはめ
まず、本法は昭和21年に施行され、施行により初めて建物の借主が敷地を賃借できるようになったため、速やかに行使された本件請求は「権利の上に眠っていた者」とはいえず、信義則違反や権利濫用(民法1条)には当たらない。次に、本法2条1項に基づく賃借権は、罹災という特殊な状況下で借地借家人の保護を目的とする立法趣旨に鑑み、設定と同時に対抗力を備えるものと解される。したがって、当該賃借権を侵害する者に対しては、物権的請求権に準じて妨害排除を求めることが可能であり、原審が認めた対抗力および妨害排除の効力は正当である。
結論
本件賃借権は物権的効力を有する特殊な権利であり、対抗要件を欠いても第三者に対し妨害排除を請求できる。また、本件請求は権利濫用等には当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
戦後の特殊な時限立法に関する判例であるが、不動産賃借権の物権化(対抗力を有する賃借権に基づく妨害排除)を認める法理の先駆けの一つとして重要である。現在の司法試験実務では、借地借家法下における対抗力の有無と妨害排除請求の可否を論じる際の比較対象や、特別法による権利付与の趣旨を重視する解釈手法として参考になる。
事件番号: 昭和27(オ)116 / 裁判年月日: 昭和29年11月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法2条の適用対象とならない賃借権については、登記や地上建物の登記といった対抗要件を備えない限り、その後の土地譲受人に対して賃借権を対抗することはできない。 第1 事案の概要:上告人は、訴外D・Eから賃借した土地上の建物を、昭和20年に防空法に基づき除却され、その際借地権を放…
事件番号: 昭和28(オ)761 / 裁判年月日: 昭和29年10月7日 / 結論: 棄却
一 土地の賃借権の共同相続人の一人が賃貸人の承諾なく他の共同相続人からその賃借権の共有持分を譲り受けても、賃貸人は、民法第六一二条により賃貸借契約を解除することはできないものと解するのが相当である。 二 戦時罹災土地物件令第三条の適用を受ける土地賃借権を有する者は、罹災後当該土地を所有者から賃借しこれに建物を建ててその…