罹災地借地借家臨時処理法第一〇条により第三者に対抗できる賃借権を有する者は、その土地に建物を有する第三者に対し、右建物の収去、土地の明渡を請求することができる。
対抗力のある賃借権と第三者に対する建物収去土地明渡請求の有無
罹災都市借地借家臨時処理法10条,民法第3編第1章第2節,民法601条
判旨
対抗力を備えた土地賃借人は、土地を不法に占有する第三者に対し、賃借権に基づき直接建物の収去および土地の明渡しを請求することができる。
問題の所在(論点)
対抗力を具備した土地賃借人が、土地の不法占拠者に対して、賃借権に基づく妨害排除請求として直接建物の収去および土地の明渡しを求めることができるか。
規範
対抗力を備えた借地権(賃借権)を有する者は、その賃借権に基づいて、土地を権原なく占有する第三者に対し、妨害排除請求として直接に建物の収去および土地の明渡しを請求し得る。
重要事実
被上告人(賃借人)は、罹災都市借地借家臨時処理法10条に基づき、第三者に対抗できる借地権を有していた。これに対し、上告人は当該土地を不法に占有していたため、被上告人が上告人に対して建物の収去と土地の明渡しを求めて提訴した。
あてはめ
事件番号: 昭和26(オ)658 / 裁判年月日: 昭和29年2月5日 / 結論: 破棄差戻
賃借権が債権であるというだけの理由で、賃借権に基く妨害排除の請求を排斥するのは違法である。
本件において、被上告人の借地権は罹災都市借地借家臨時処理法10条の規定により第三者に対抗し得るものである。対抗力を備えた賃借権は、単なる債権を超えて物権に類似した排他的効力を有すると解されるため、所有権に基づく請求を代位行使するまでもなく、被上告人は自らの賃借権を根拠として、不法占有者である上告人に土地の返還(収去・明渡し)を請求することが認められる。
結論
被上告人の請求を認容し、不法占有者である上告人は建物を収去して土地を明け渡さなければならない。
実務上の射程
本判決は、対抗力を備えた不動産賃借権に妨害排除請求権を認める実務上の確立した法理を示している。答案上は、賃借人が直接不法占有者を排除しようとする場面で、民法601条等の規定に加えて「対抗力(借地借家法10条、31条等)を具備した賃借権」の物権的効力として構成する際に不可欠な判例である。
事件番号: 昭和27(オ)306 / 裁判年月日: 昭和29年6月17日 / 結論: 棄却
罹災都市借地借家臨時処理法第二条に基く賃借権は当然対抗力をそなえ賃借権者は、これを侵害する者に対し妨害排除を請求することができる。
事件番号: 昭和27(オ)1088 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 破棄差戻
罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条の適用を受ける罹災建物の敷地の借地権者は、必ずしも、右建物の滅失当時、その借地権または建物につき登記を有した者に限らないと解すべきである。
事件番号: 昭和30(オ)859 / 裁判年月日: 昭和31年6月1日 / 結論: 棄却
罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条による借地権の対抗を受ける第三者の中には、当該土地について借地権を取得しその上に登記した建物を所有する者をも含む。