罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条の適用を受ける罹災建物の敷地の借地権者は、必ずしも、右建物の滅失当時、その借地権または建物につき登記を有した者に限らないと解すべきである。
罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条の適用を受ける借地権者
罹災都市借地借家臨時処理法10条
判旨
罹災都市借地借家臨時処理法10条に基づく借地権の対抗力は、建物滅失前に建物保護法による登記を備えていた者に限らず、登記を備えていなかった借地権者にも認められる。これは、戦災による犠牲を最小限に抑え、借地権者の地位を安定させるという同条の立法趣旨に基づくものである。
問題の所在(論点)
罹災都市借地借家臨時処理法10条が定める借地権の対抗力を取得するためには、建物が滅失・除却される前に、当該建物について建物保護法に基づく登記を備えている必要があるか。
規範
罹災都市借地借家臨時処理法10条の適用を受ける借地権者は、建物滅失又は除却の当時、当該建物につき登記をしていた者(建物保護法の適用対象者)だけでなく、登記をしていなかった者も包含すると解する。同条の立法趣旨は、戦時の非常事態下における借地権者を特別に保護し、戦争による不利益を軽減することにあるため、両者の間に差別を設けることは不合理だからである。
重要事実
上告人は、戦争による火災等で建物が滅失した土地の借地権者であった。当該建物には滅失前に登記が備えられていなかったが、上告人は同法10条に基づき、昭和21年7月1日から5年以内に土地権利を取得した第三者(被上告人)に対して借地権の対抗力を主張した。原審は、建物保護法上の登記がなかったことを理由に、同法10条による対抗力を否定した。
事件番号: 昭和27(オ)935 / 裁判年月日: 昭和30年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法2条に基づく借地権は、登記や地上建物の登記を欠く場合であっても、設定から10年間は第三者に対して対抗することができる。 第1 事案の概要:本件における事案の詳細は判決文からは不明であるが、罹災法2条に基づき設定された借地権の存否、および当該借地権の対抗要件の欠落を理由とし…
あてはめ
同法10条の立法趣旨は、戦争による建物の滅失という不可抗力な犠牲を蒙った借地権者の地位を安定させ、住宅難の緩和と都市復興を促進することにある。登記の有無によって保護の可否を分けることは、戦時の不利益を軽減しようとする同条の目的に照らして不合理である。したがって、滅失当時に未登記であった借地権者も、同条の要件を満たす限り、登記なくして第三者に対抗し得ると解される。
結論
建物滅失前に登記がなかった借地権者であっても、同法10条の定める期間内であれば、登記なくして第三者に対して借地権を対抗することができる。
実務上の射程
特別法による対抗力の特例に関する判断であるが、立法趣旨(目的論的解釈)を重視して適用範囲を画定する手法は、借地借家法10条2項(建物滅失後の掲示による対抗力維持)等の解釈においても参考となる。答案上は、制度の趣旨から要件を緩和または確定する論理構成のモデルとして有用である。
事件番号: 昭和27(オ)1291 / 裁判年月日: 昭和30年4月5日 / 結論: 棄却
罹災地借地借家臨時処理法第一〇条により第三者に対抗できる賃借権を有する者は、その土地に建物を有する第三者に対し、右建物の収去、土地の明渡を請求することができる。
事件番号: 昭和28(オ)761 / 裁判年月日: 昭和29年10月7日 / 結論: 棄却
一 土地の賃借権の共同相続人の一人が賃貸人の承諾なく他の共同相続人からその賃借権の共有持分を譲り受けても、賃貸人は、民法第六一二条により賃貸借契約を解除することはできないものと解するのが相当である。 二 戦時罹災土地物件令第三条の適用を受ける土地賃借権を有する者は、罹災後当該土地を所有者から賃借しこれに建物を建ててその…
事件番号: 昭和28(オ)1091 / 裁判年月日: 昭和30年12月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】罹災都市借地借家臨時処理法に基づく敷地優先賃借申出権の発生には、罹災建物滅失当時に当該敷地を建物所有目的で使用していたことを要しない。また、同法10条は借地権者が罹災建物を所有していた場合にのみ適用される。 第1 事案の概要:上告人Aは、本件土地が罹災建物の敷地であったとして、罹災都市借地借家臨時…
事件番号: 昭和30(オ)859 / 裁判年月日: 昭和31年6月1日 / 結論: 棄却
罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条による借地権の対抗を受ける第三者の中には、当該土地について借地権を取得しその上に登記した建物を所有する者をも含む。