建築基準法第五五条の適用上建物の建設が不可能な程度に狭い借地でも、これにつき罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条の適用がないものと解すべきでない。
建築基準法上建物の建設が不可能な借地と罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条の適用の有無。
罹災都市借地借家臨時処理法10条,建築基準法55条
判旨
罹災都市借地借家臨時処理法10条は、戦災により建物を滅失した借地権者の直接的な保護を目的とするため、建築基準法上の制限等により現に建物の建設が不可能な借地であっても、同条の適用がある。
問題の所在(論点)
建築基準法等の法的制限により、現状において建物の建設が不可能な借地についても、罹災都市借地借家臨時処理法10条による借地権の対抗力維持の規定が適用されるか。
規範
罹災都市借地借家臨時処理法10条の趣旨は、戦災による建物滅失で対抗力を失う借地権者の地位を安定させ、借地関係の混乱を防ぐという直接的な借地権の保護にある。したがって、同条の適用は、借地権者が現に建物を建設できるか否か、あるいは建設の意思や見込みがあるか否かによって左右されるものではない。
重要事実
借地権者が罹災建物の敷地について同法10条に基づく対抗力を主張したが、当該土地は建築基準法55条等の規定により、現状では建物の建設が不可能な状態であった。上告人は、建物建設が不可能な借地には同条の適用がないと主張して争った。
事件番号: 昭和27(オ)306 / 裁判年月日: 昭和29年6月17日 / 結論: 棄却
罹災都市借地借家臨時処理法第二条に基く賃借権は当然対抗力をそなえ賃借権者は、これを侵害する者に対し妨害排除を請求することができる。
あてはめ
同法10条は戦災都市の復興という側面も有するが、より直接的には借地権そのものの保護を目的とする。建物建設の促進のみを強調すれば、建設の意思や資力がない場合まで保護を否定することになり妥当でない。また、現状で建設が不可能でも、隣地の取得や借り増しによって建設が可能となる余地もあり、これを無価値として保護を否定すべきではない。よって、建設不能の事実をもって同条の適用を排除することはできない。
結論
建築基準法上、現に建物の建設が許されない借地であっても、罹災都市借地借家臨時処理法10条の保護が与えられる。
実務上の射程
特別法上の対抗力維持規定の解釈において、制度の直接的な目的(権利保護)と究極的な目的(都市復興)を区別し、前者を有益に解釈した事例。建築制限等の公法上の規制が私法上の権利保護(対抗力)に直ちに影響しないことを示す際の法理として活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)761 / 裁判年月日: 昭和29年10月7日 / 結論: 棄却
一 土地の賃借権の共同相続人の一人が賃貸人の承諾なく他の共同相続人からその賃借権の共有持分を譲り受けても、賃貸人は、民法第六一二条により賃貸借契約を解除することはできないものと解するのが相当である。 二 戦時罹災土地物件令第三条の適用を受ける土地賃借権を有する者は、罹災後当該土地を所有者から賃借しこれに建物を建ててその…
事件番号: 昭和34(オ)326 / 裁判年月日: 昭和36年3月7日 / 結論: 棄却
従前の土地の一部について賃借権を有する者はたとえその賃借部分が仮換地に含まれていても、賃借権について仮に権利の目的となるべき部分の指定を受けないかぎり、右賃借部分の使用権を有しない。