町がその所有する普通財産である土地を町内の自治会に対し地域集会所の建設用地として無償で譲渡した場合において,上記無償譲渡は,マンションの建設に伴い会員数の急増した上記自治会が地域住民等の共同の利用に供される地域集会所を建設することを助成するために行われたものであり,町は,その建設用地を購入して上記自治会に提供するための資金として上記マンションを建設した会社から金員の寄附を受け,この趣旨に沿ってその金員を購入資金に充てて上記土地を取得したものであって,町議会において上記の一連の経緯及びその説明を踏まえて上記無償譲渡を承認する旨の議決がされているなど判示の事情の下では,上記無償譲渡につき地方自治法232条の2所定の公益上の必要があるとした町長の判断に,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用した違法があるとはいえない。
町がその所有する普通財産である土地を町内の自治会に対し地域集会所の建設用地として無償で譲渡したことにつき地方自治法232条の2所定の公益上の必要があるとした町長の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用による違法があるとはいえないとされた事例
地方自治法96条1項6号,地方自治法232条の2,地方自治法237条2項,地方自治法238条の5第1項
判旨
普通地方公共団体が土地開発公社から適正な対価で土地を買い取り、これを宗教法人へ無償譲渡・補助金交付した行為について、信教の自由や政教分離原則に鑑みた宗教的意義や援助目的が認められない限り、公金支出等を禁じた地方自治法232条の2に違反しない。
問題の所在(論点)
普通地方公共団体が特定の宗教法人に対して行う土地の無償譲渡および補助金の交付が、地方自治法232条の2の「公益上の必要」を欠き、違法となるか。
規範
地方自治法232条の2(寄附又は補助)の規定に違反するか否かは、当該支出が地方公共団体の事務を遂行するために「公益上必要がある場合」に該当するか否かによって判断される。特に宗教法人に対する支出については、憲法20条1項後段、3項、89条が定める政教分離原則を考慮し、当該支出が宗教的意義を有し、特定の宗教への援助・助長・促進等になるかという観点を含めて慎重に判断すべきである。
重要事実
X(住民)は、Y市が土地開発公社から約1億円で買い取った土地を、宗教法人Aに対して無償譲渡(無償譲渡契約)し、さらに補助金(約3,100万円)を交付した行為が、地方自治法232条の2および憲法の政教分離原則に違反すると主張し、住民訴訟を提起した。当該土地は、Aの所有地内にマンション建設を計画した業者が、周辺住民の反対運動を解決するために市へ寄附を申し出た等の経緯を経て、最終的に公社が先行取得していたものであった。
あてはめ
本件土地取得の目的は、マンション建設に伴う住民紛争の解決や、地域の住環境の維持・整備といった世俗的な目的(まちづくり)に主眼があったといえる。Y市による無償譲渡および補助金交付は、公社による土地の先行取得という一連の処理(いわゆる「肩代わり」)の最終的な清算行為としての側面が強く、特定の宗教を援助・助長する宗教的意義を有するものとは認められない。したがって、市長が「公益上の必要がある」と判断して行った本件支出等は、裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとはいえない。
結論
本件無償譲渡および補助金交付は、地方自治法232条の2に違反せず、適法である。
実務上の射程
本判決は、宗教法人が絡む事案であっても、行政行為の目的が世俗的な紛争解決や住環境整備にある場合には、政教分離原則に直ちに抵触するものではなく、地方自治法上の「公益上の必要」が認められうることを示した。答案上は、政教分離の「目的効果基準」に準じた検討を行い、支出の世俗的目的を強調する文脈で使用する。
事件番号: 平成7(行ツ)122 / 裁判年月日: 平成11年10月21日 / 結論: 棄却
市から社会福祉法人を経て地元の戦没者遺族会に配分された補助金の支出及び市の職員による右遺族会の書記事務への従事は、その目的が遺族の福祉増進にあることが明らかであり、遺族の福祉増進の面での金銭的ないし事務補助による援助が結果として右遺族会の宗教性を帯びた活動に対する間接的な援助となる面があるとしても、その効果は、間接的、…
事件番号: 平成19(行ツ)334 / 裁判年月日: 平成22年1月20日 / 結論: 棄却
市が町内会に対し無償で神社施設の敷地としての利用に供していた市有地を同町内会に譲与したことは,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,憲法20条3項,89条に違反しない。 (1) 上記神社施設は明らかに神道の神社施設であり,そこでは神道の方式にのっとった宗教的行事が行われており,上記のような市有地の提供行為をそのまま…