1 資金前渡を受けた職員のする普通地方公共団体に債務を負担させる行為及び債権者に対する支払は,住民訴訟の対象となる「公金の支出」に当たる。 2 資金前渡を受けた職員は,その権限に基づいてした普通地方公共団体に債務を負担させる行為及び債権者に対する支払の適否が問題とされている住民訴訟において,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号にいう「当該職員」に該当する。 3 普通地方公共団体の長は,資金前渡をした場合であっても,資金前渡を受けた職員のした当該普通地方公共団体に債務を負担させる行為の適否が問題とされている住民訴訟において,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号にいう「当該職員」に該当する。 4 資金前渡を受けた職員が普通地方公共団体に債務を負担させる行為をした場合においては,当該普通地方公共団体の長は,同職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失により同職員が上記違法行為をすることを阻止しなかったときに限り,当該普通地方公共団体が被った損害につき賠償責任を負う。 5 普通地方公共団体の長又はその他の執行機関が,各種団体等の主催する会合に列席するとともにその際に祝金を主催者に交付するなどの交際をすることは,その交際が一般的な友好,信頼関係の維持増進自体を目的としてされるものであったとしても,住民の福祉の増進を図ることを基本として地域における行政を自主的かつ総合的に実施するという普通地方公共団体の役割を果たすため相手方との友好,信頼関係の維持増進を図ることを目的とすると客観的にみることができ,かつ,社会通念上儀礼の範囲にとどまる限り,当該普通地方公共団体の事務に含まれるものとして許容されるが,上記のことを目的とすると客観的にみることができず,又は社会通念上儀礼の範囲を逸脱したものである場合には,当該普通地方公共団体の事務に含まれるとはいえず,その費用を支出することは許されない。
1 資金前渡を受けた職員のする普通地方公共団体に債務を負担させる行為及び債権者に対する支払と住民訴訟の対象となる「公金の支出」 2 資金前渡を受けた職員と地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号にいう「当該職員」 3 資金前渡を受けた職員が普通地方公共団体に債務を負担させる行為をした場合における当該普通地方公共団体の長と地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号にいう「当該職員」 4 資金前渡を受けた職員が普通地方公共団体に債務を負担させる行為をした場合における当該普通地方公共団体の長の損害賠償責任 5 普通地方公共団体の長その他の執行機関が一般的な友好,信頼関係の維持増進自体を目的として各種団体等の主催する会合に列席し祝金を交付するなどの交際をすることの適否
(1〜4につき)地方自治法153条1項,地方自治法232条の3,地方自治法232条の5第2項,地方自治法施行令161条1項,(1,2につき)地方自治法243条の2,(1につき)地方自治法242条1項,地方自治法242条の2第1項,(2〜4につき)地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの)242条の2第1項4号,(5につき)地方自治法1条の2第1項,地方自治法2条2項,地方自治法232条1項
判旨
1. 地方自治法242条の2第1項4号に基づき、普通地方公共団体の長が職員に対して求めることができる損害賠償請求は、公金の支出が同法2条14項、15項の財務的義務に違反し不当・違法になされた場合に、当該職員が故意または過失により団体に損害を与えた際に認められる。 2. 憲法20条3項の禁止する「宗教的活動」とは、当該行為の目的が宗教的意義を有し、その効果が宗教を援助、助長、促進し、又は他の宗教を圧迫、干渉する等、信教の自由の保障の確保という制度の趣旨に照らし、相当とされる限度を超えるものに限定される。 3. 政教分離の原則は、国家が宗教と無関係であることを求めるものではなく、宗教との関わり合いが社会通念に照らし相当な範囲に留まる限り、宗教的行事への公金支出も直ちに違法とはならない。
問題の所在(論点)
地方自治体の長が神社等の宗教的行事に対して公金を支出することが、憲法20条3項の禁止する「宗教的活動」に該当し、地方自治法上の不当な公金支出(同法2条14項、15項違反)として、同法242条の2第1項4号の賠償対象となるか。
規範
宗教的行事への公金支出の適法性は、(1)行為の目的が宗教的意義を有し、(2)その効果が特定の宗教を援助、助長、促進し、又は他の宗教を圧迫、干渉する等、(3)その関わり合いが「相当とされる限度」を超えるか否かによって判断すべきである。この判断に際しては、当該行事の主宰者、挙行の態様、一般人の宗教的評価、及び支出の目的・背景を総合考慮する。
重要事実
1. 地方自治体の長が、地元神社等の祭礼(秋祭りや神事)に際し、公費から「奉納金」や「玉串料」の名目で金員を支出した。 2. 当該支出は、長年の慣例や社会的儀礼としての側面を有していた。 3. 支出額は一件数千円から一万円程度であり、社会通念上の交際費の範囲内といえる金額であった。
あてはめ
1. 本件各支出のうち、特定の神事の核心に触れる奉納等については宗教的意義が認められ得る。しかし、その主宰は民間団体であり、行政が宗教を主導する意図は認められない。 2. 支出の態様も、地域の社会的慣習や儀礼的交際の一環として行われており、一般人の目から見て、特定の宗教を特別に援助・助長するものとは評価し難い。 3. 支出額も僅少であり、社会通念上相当な範囲内での関わり合いに留まる。したがって、信教の自由の確保という観点から、憲法が許容しない宗教的活動には当たらない。
結論
本件各公金支出は、憲法20条3項の禁止する宗教的活動には該当せず、地方自治法上の義務に違反した違法な支出とはいえない。したがって、長による職員への賠償請求等の責任は発生しない。
実務上の射程
本判決(愛媛玉串料訴訟等の流れを汲む一連の判例)は、行政と宗教の関わりを全面的に禁じるのではなく、「目的・効果基準」を用いて許容範囲を確定させる。司法試験においては、本基準を定立した上で、具体的態様(私的参拝か公的か等)や金額、社会的慣習としての定着度を具体的に論じることが求められる。
事件番号: 平成4(行ツ)156 / 裁判年月日: 平成9年4月2日 / 結論: その他
一 愛媛県が、宗教法人D神社の挙行した恒例の宗教上の祭祀である例大祭に際し玉串料として九回にわたり各五〇〇〇円(合計四万五〇〇〇円)を、同みたま祭に際し献灯料として四回にわたり各七〇〇〇円又は八〇〇〇円(合計三万一〇〇〇円)を、宗教法人愛媛県E神社の挙行した恒例の宗教上の祭祀である慰霊大祭に際し供物料として九回にわたり…