一 愛媛県が、宗教法人D神社の挙行した恒例の宗教上の祭祀である例大祭に際し玉串料として九回にわたり各五〇〇〇円(合計四万五〇〇〇円)を、同みたま祭に際し献灯料として四回にわたり各七〇〇〇円又は八〇〇〇円(合計三万一〇〇〇円)を、宗教法人愛媛県E神社の挙行した恒例の宗教上の祭祀である慰霊大祭に際し供物料として九回にわたり各一万円(合計九万円)を、それぞれ県の公金から支出して奉納したことは、一般人がこれを社会的儀礼にすぎないものと評価しているとは考え難く、その奉納者においてもこれが宗教的意義を有する者であるという意識を持たざるを得ず、これにより県が特定の宗教団体との間にのみ意識的に特別のかかわり合いを持ったことを否定することができないのであり、これが、一般人に対して、県が当該特定の宗教団体を特別に支援しており右宗教団体が他の宗教団体とは異なる特別のものであるとの印象を与え、特定の宗教への関心を呼び起こすものといわざるを得ないなど判示の事情の下においては、憲法二〇条三項、八九条に違反する。 二 愛媛県が憲法二〇条三項八九条に違反して宗教法人D神社等に玉串料等を県の公金から支出して奉納したことにつき、右支出の権限を法令上本来的に有する知事は、委任を受け又は専決することを任された補助職員らが右支出を処理した場合であっても、同神社等に対し、右補助職員らに玉串料等を持参させるなどしてこれを奉納したと認められ、当該支出には憲法に違反するという重大な違法があり、地方公共団体が特定の宗教団体に玉串料等の支出をすることについて、文部省自治省等が、政教分離原則に照らし、慎重な対応を求める趣旨の通達、回答をしてきたなどの事情の下においては、その指揮監督上の義務に違反したものであり、過失があったというのが相当であるが、右補助職員らは、知事の右のような指揮監督の下でこれを行い、右支出が憲法に違反するか否かを極めて容易に判断することができたとまではいえないという事情の下においては、その判断を誤ったものであるが、重大な過失があったということはできない。 三 複数の住民が提起する住民訴訟は、類似必要的共同訴訟と解すべきである。 四 複数の住民が共同訴訟人として提起した住民訴訟において、共同訴訟人の一部の者が上訴すれば、それによって原判決の確定が妨げられ、当該訴訟は全体として上訴審に移審し、上訴の判決の効力は上訴をしなかった共同訴訟人にも及ぶが、上訴をしなかった共同訴訟人は、上訴人にはならず、上訴をした共同訴訟人のうちの一部の者が上訴を取り下げた場合は、その者は上訴人ではなくなる。 (一につき、補足意見、意見及び反対意見がある。)
一 県がD神社又はE神社の挙行した例大祭、みたま祭又は慰霊大祭に際し玉串料、献灯料又は供物料を県の公金から支出して奉納したことが憲法二〇条三項、八九条に違反するとされた事例 二 委任又は専決により県の補助職員らが公金支出を処理した場合において知事は指揮監督上の義務に違反したものであり過失があったが補助職員らは判断を誤ったけれども重大な過失があったということはできないとされた事例 三 複数の住民が提起する住民訴訟と類似必要的共同訴訟 四 複数の住民が共同訴訟人として提起した住民訴訟において共同訴訟人の一部の者がした上訴又は上訴の取下げの効力
地方自治法153条1項,地方自治法242条の2第1項,地方自治法242条の2第4項,地方自治法243条の2第1項,憲法20条,憲法89条,民訴法52条1項,民訴法363条
判旨
地方公共団体が特定の宗教団体の祭祀に際して公金から玉串料等を支出することは、その目的が宗教的意義を持ち、効果が特定の宗教に対する援助・助長等になる場合、憲法20条3項の禁止する宗教的活動に当たり、89条にも違反する。
問題の所在(論点)
地方公共団体による宗教団体への玉串料等の公金支出が、憲法20条3項の禁止する「宗教的活動」および89条の禁止する宗教団体への公金支出に該当し、違憲となるか。
規範
政教分離原則は、国家と宗教とのかかわり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし、相当とされる限度を超える場合にこれを許さない。憲法20条3項の「宗教的活動」とは、目的が宗教的意義を持ち、効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になる行為をいう。その判断にあたっては、行為の場所、一般人の宗教的評価、行為者の意図・目的・宗教的意識、一般人に与える効果・影響を諸般の事情として考慮し、社会通念に従い客観的に判断する。
重要事実
愛媛県知事らが、靖国神社の例大祭やみたま祭、および愛媛県護国神社の慰霊大祭に際し、県の公金から「玉串料」「献灯料」「供物料」として、1回あたり5000円から1万円(総額約16万円)を数年間にわたり継続して支出した。これに対し、住民が地方自治法に基づき、違憲な公金支出であるとして損害賠償等を求めて提訴した。
あてはめ
本件支出は特定の宗教団体の重要な祭祀(例大祭等)に際してなされたものであり、地鎮祭等の起工式とは異なり、宗教的意義が希薄化した社会的儀礼とはいえない。一般人の評価として、県が特定の宗教団体を特別に支援しているとの印象を与え、関心を呼び起こす効果がある。知事側に戦没者慰霊という世俗的目的があったとしても、特定の宗教儀式への賛助という客観的性質は否定できず、そのかかわり合いは相当な限度を超えている。
結論
本件支出は、憲法20条3項の禁止する宗教的活動に当たり、かつ89条が禁止する公金支出にも該当するため違憲である。知事には指揮監督上の過失が認められ、損害賠償責任を負う。
実務上の射程
津地鎮祭訴訟の「目的・効果基準」を維持しつつ、公金支出の事案に適用して違憲判断を下したリーディングケース。社会的儀礼の範囲内か否かの判断において、支出先の宗教的性格や行事の重要性が厳格に評価される点に射程がある。答案では、行政による宗教的関与が「便宜供与」にとどまらず「特定の宗教との密接な結び付き」を生じさせる場合に引用すべき判例である。
事件番号: 平成7(行ツ)122 / 裁判年月日: 平成11年10月21日 / 結論: 棄却
市から社会福祉法人を経て地元の戦没者遺族会に配分された補助金の支出及び市の職員による右遺族会の書記事務への従事は、その目的が遺族の福祉増進にあることが明らかであり、遺族の福祉増進の面での金銭的ないし事務補助による援助が結果として右遺族会の宗教性を帯びた活動に対する間接的な援助となる面があるとしても、その効果は、間接的、…