村長の職務執行行為により違法に損害を加えられたとする者が村長個人を被告として不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起した場合において、村長が右訴訟事件の応訴のための弁護士費用を村の予算から支出することは、違法な公金の支出にあたる。
村長がその職務執行行為に関し個人として訴えられた損害賠償請求事件の応訴のための弁護士費用を村の予算から支出したことが違法な公金の支出にあたるとされた事例
地方自治法232条1項,地方自治法232条の3,地方自治法204条の2
判旨
地方公共団体の長等が個人として提訴された損害賠償請求訴訟において、当該団体がその弁護士費用を支出することは、公務遂行との直接の関連性が認められない限り、公金の違法な支出に該当する。
問題の所在(論点)
地方公共団体の長が個人として提訴された損害賠償請求訴訟において、当該団体がその弁護士費用を公金から支出することが、地方自治法上の適法な公金支出といえるか。
規範
地方公共団体の公金支出が適法とされるためには、当該支出が当該団体の事務遂行上の必要に基づき、かつその目的に即した合理的範囲内のものであることを要する。特に、長等の個人を被告とする訴訟の弁護士費用を団体が負担する場合、その訴訟が実質的に団体の法的利益を擁護する性質を有するか、あるいは公務の執行と不可分一体の関係にあるといった特段の事情がない限り、私的な利益のための支出として違法となる。
重要事実
D村の長であった上告人に対し、個人としての不法行為責任を追及する損害賠償請求訴訟(被告・被控訴人が上告人個人であるもの)が提起された。この訴訟に際し、D村は上告人が負担すべき弁護士費用を村の公金から支出した。住民側は、この公金支出が違法であるとして、住民訴訟を提起した。
あてはめ
本件訴訟は、上告人個人を被告・被控訴人とする損害賠償請求訴訟であり、その法的責任の主体はあくまで個人である。D村が支出した弁護士費用は、上告人個人の防御活動に充てられるものであり、村自体の事務遂行に直接必要な経費とは認められない。したがって、公務遂行との直接的関連性や団体の法的利益擁護という特段の事情が認められない以上、当該支出は公金の目的外支出にあたり違法であると評価される。
結論
D村が上告人個人の損害賠償請求訴訟のために支出した弁護士費用は、違法な公金の支出にあたる。
実務上の射程
本判決は、長個人の民事責任が問われる訴訟における弁護士費用の公費負担について、原則として否定する立場を明確にしたものである。答案作成上は、公金支出の適法性(地方自治法2条、232条等)が問われる場面で、支出の目的外性・不合理性を基礎付ける有力な判断材料として活用できる。ただし、公務員個人に対する訴訟が「職務執行の適法性」を争う実質を持つ場合に、団体の補助参加や一定の範囲での費用支援が許容される余地(最判平成16年2月20日等)との比較検討に留意すべきである。
事件番号: 平成6(行ツ)77 / 裁判年月日: 平成8年4月26日 / 結論: 棄却
町が県に対してミニパトカーを寄附することは、法令の規定に基づき経費の負担区分が定められている事務について地方公共団体相互の間における経費の負担区分を乱すことに当たり、地方財政法二八条の二に違反する。